医者も知らない医学の新常識

少量のお酒でも脳が萎縮する可能性 英国医療データ解析で判明

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 お酒を飲むことの健康への影響については、いろいろな意見があります。「酒は百薬の長」という言葉があるように、少量のお酒は健康に良い、という考え方は昔からあり、赤ワインの成分が動脈硬化を予防する、というような研究もあります。

 お酒をたくさん飲むことが健康に悪いという点について、科学者の意見はほぼ一致していますが、少量のお酒については議論のあるところなのです。

 健康に害のないアルコール量はどのくらいでしょうか? 1日のアルコール量で20グラムくらいまで、というのが一番多い見解になっています。これは、ビールでいえば中瓶1本、日本酒で1合くらいの量です。

 それでは、1日お酒1合以内であれば問題はないのでしょうか? 今年のネイチャー系の医学誌に、ちょっと気になる研究結果が発表されています。お酒を飲み過ぎると脳が萎縮して、認知症のリスクになるというのは、広く知られている知見です。イギリスで大規模な医療データを解析したところ、1日10~20グラムくらいの飲酒量でも、脳の萎縮が進行する可能性があることが明らかになったのです。データによれば、1日10~20グラムの飲酒により、飲まない人より脳が2歳ほど老化していました。

 この違いをどう考えるかは難しいところですが、認知症の予防のためには、お酒の量を少しでも減らすことが大切ではあるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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