一通り電話をかけてから、最後に、私が憧れている故マザー・テレサに「もしも病気が良くなったら『看取りの家』をつくるので命を助けてください」とお願いをしました。
もともと島に渡ったのは、お年寄りが容易に自宅での死を選べないことへの疑問からでした。病院がない離島ならそれがかなうと思ったのですが、独居だと100歳でも本土の病院に運ばれて亡くなる。せっかく離島まで来たのに、まるで力になれないことがとても大きなストレスでした。なので、看取りの家づくりは私の夢だったのです。
願いがかなって、声を失うこともなく手術が成功したので2週間で退院し、通院もせずに看取りの家づくりに邁進しました。ちょうど入院中に島の集会場が競売に出されたのも奇跡なら、私が落札できたことも奇跡。私よりも高い金額を提示した人もいたんですけど、島が上限と下限を決めていたことで救われました。まさに「がんが私にくれたギフト」でした。
独白 愉快な“病人”たち