上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「胎児」の心臓手術は医師も機材も高い技術が必要になる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 2021年7月、母親のお腹の中にいる赤ちゃんの心臓手術が国内で初めて行われ、無事に成功したことが同12月に発表されました。

 臨床試験としてこの手術を実施した国立成育医療研究センターによると、赤ちゃんは重症の「大動脈弁狭窄症」で全身に血液を送り出しづらい状態だったため、生まれた直後から心不全を起こして命の危険があったといいます。そのため、母親の胎内にいるうちに治療を行う必要があり、妊娠25週だった母親の腹部から細いカテーテルを通し、赤ちゃんの心臓まで到達させ、大動脈弁が狭くなっているところでバルーンを広げる外科治療が実施されたのです。

 大動脈弁が広がったことで通常に近い形で心臓の発育が促され、赤ちゃんは無事に生まれて経過も良好だといいます。同センターは臨床試験として今後も同様の外科治療の実施を目標にしていて、安全性と有効性の高い治療法の確立を目指しているとのことです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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