腰痛に対して用いられる薬の中には「漢方薬」も数多くあります。今回はその中でも比較的使用頻度が高い「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」についてお話しします。
八味地黄丸は、地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)の8種類の生薬から構成される漢方で、加齢に伴って下半身の臓器の機能が低下した状態=「腎虚」に対して用いられます。「腎」は人の成長、発育、生殖、老化をつかさどり、全身のエネルギーをためておく臓器とされ、腎虚になると、腰痛、肩こり、手足のしびれ、冷え、喉の渇き、頻尿といった症状が表れます。
腰痛よりも疲労や倦怠(けんたい)感によく使われたり、加齢に伴う虚弱体質や尿量の調節を目的に使用したりすることが多いので、薬局や薬店で勧められたことがある方も多いのではないでしょうか。腰痛では、高齢で腰や下肢の衰え、脱力感があり、排尿障害を伴う場合などに繁用されています。
ここで、関連する「六味丸(ロクミガン)」と「牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)」にも触れておきます。
前述の通り、八味地黄丸は8種の生薬が含まれていますが、その中から桂皮と附子を除いたものが六味丸です。桂皮と附子は、体を温め新陳代謝を促す働きがあるため、「ほてり」や「のぼせ」の症状がある方の腰痛には、六味丸を使うケースがあります。
また、八味地黄丸に牛膝(ゴシツ)、車前子(シャゼンシ)を加えた10種類の生薬から成るものが牛車腎気丸です。牛膝と車前子はどちらも利尿作用や鎮痛作用が強く、下肢の冷えやしびれのある腰痛に用いられています。
八味地黄丸、六味丸、牛車腎気丸は、いずれも体内に不足しているものを補う作用によって効果を発揮すると考えられています。加齢によって衰えた腎を補って症状を改善するのです。
漢方薬は長期間服用しないと効果を得られないという意見も耳にしますが、一般的に構成生薬の種類が少ない製剤については即効性があるとされています。どのタイプの漢方薬が自分に向いているのか──。悩んだら症状や体質を薬剤師に伝え、気軽に相談してみてください。
次回も腰痛に使われるほかの漢方薬についてお話しします。
腰痛のクスリと正しくつきあう