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腸内細菌が免疫チェックポイント阻害薬の効果をアップさせる可能性

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と、いろいろながんに対して効果のある「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)」との関係が注目されています。がん患者にICIが効くかどうか、患者の便の細菌を調べることで分かるのではないかというのです。

まだ研究段階での途上の話ですが、便を調べてみて、腸内に多様な菌種が存在する場合はICIの有効性が高いこと、そしてもし抗生剤を投与していた場合はそれによって腸内フローラが変化し、ICIの効果が減弱するのではないか--といった報告がなされています。

 また、腸内フローラそのものよりも、その代謝産物が血中で免疫細胞に作用することでICI効果が高められる可能性も指摘されています。つまり、腸内フローラとICI治療との関係が少しずつ分かってきているのです。

 腸内細菌は、菌種ごとの塊となって腸の壁に隙間なく張り付いていて、腸内フローラを形成しています。およそ1000種類、100兆個で1.5~2キロもの細菌が腸内に共生しているといわれます。細菌叢は口腔内でも形成されていますが、口腔内には酸素が存在するため、好気性の細菌が大半を占めています。腸内フローラでは嫌気性菌が中心です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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