感染症別 正しいクスリの使い方

【重症熱性血小板減少症候群】マダニの活動が盛んになる季節は細心の注意を

マダニ

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」とは、2011年に初めて特定された新しいウイルス(SFTSウイルス)による感染症です。2009年に中国で症例が報告されて以降、日本では2013年1月に海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告されました。その後、九州、四国、中国、近畿を中心に毎年60~100人程度の患者が確認され、最近は東日本でも増加傾向です。

 SFTSウイルスを保有しているマダニに直接かまれる、もしくはマダニにかまれて感染した動物(野生、屋外で飼育されている動物)の体液などにより感染します。また、感染患者の血液や体液との接触感染も報告されています。

 マダニは野外に生息する大型のダニで、屋内に生息するダニ(コナダニ類・チリダニ類など)はこの疾患とは関係ありません。

 潜伏期間は6日~2週間程度とされています。主な症状は発熱と消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)が中心で、倦怠感、リンパ節の腫れ、出血症状なども見られます。致死率は10~30%程度でウイルス感染症としては高く、日本ではこれまで70人以上が亡くなっています。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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