歯を残す「根管治療」は3つの機器が揃った歯科医院で受けたい

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 コロナ禍の健康維持のために口腔ケアが注目されている。年をとっても自分の歯で食事することができると、免疫力の向上や脳の活性化にもつながる。残っている歯の本数と寿命は大きく関連しているという報告もある。一生、自分の歯を残すために知っておきたいのが歯科の「根管治療」だ。斉藤歯科医院の佐久間洋平氏に聞いた。

 われわれの口腔内にはおよそ700種類、全体で1000億個以上の細菌が生息しているといわれる。ほとんどが病原性のない細菌だが、中にはミュータンス菌のように虫歯の原因になる細菌も存在している。

 ミュータンス菌は、歯の表面に付着した食べ物の残りカスにすみついて繁殖し、糖分などを栄養にして酸を産生する。この酸が歯の表面のエナメル質を溶かして穴を開け、虫歯を引き起こすのだ。

 虫歯がそれほど進行していない状態であれば、虫歯になっている箇所を削って詰め物をする治療で済む。しかし、虫歯が深く進んで歯の中にある神経まで達し、神経が細菌に感染してしまった場合、根管治療が必要になる。

「細菌に感染した部分の神経をすべて取り除き、患部を洗浄・消毒して細菌が限りなくゼロに近い状態に戻してからかぶせ物で蓋をして再感染を防ぎ、歯を残すことを目的に行うのが根管治療です。虫歯が深すぎて削ってから残せる歯の部分がほとんどなかったり、根管治療では手に負えない状態で、歯の再植などの外科的歯内療法も難しい場合、最終手段として抜歯が検討されるケースが散見されます。ですから、根管治療は虫歯になった歯を残すための“関門”にあたる治療といえます」

 虫歯ではなく、重度の歯周病で歯を支える骨が溶けてしまっているような場合は抜歯が選択されるが、これは違う疾患の話になる。つまり虫歯では、きちんとした根管治療が適切に行われれば、歯を失わずに済むのだ。

 とはいえ、保険点数が低いこともあって、しっかりした根管治療を行っている歯科医院は多いとはいえないのが現状だという。

「根管は、歯根の中にある神経や血液が通っている道のことで、直径が0.3ミリほどしかないうえ、曲がりくねっていたり枝分かれしていたりと迷路のような複雑な形状をしています。そのため、患部をきちんと見ることができなかったり、治療器具が入らなかったりするケースがあるのです。現在、根管治療を受けている患者さんは、虫歯を放置していたことで神経が細菌に感染してしまった場合もありますが、ほとんどは以前に神経を抜くなどする根管治療を行ったものの、そこから再び感染を起こして再治療が必要になったケースです。それだけ根管治療はハードルが高いといえます」

■根管の状態を的確に把握できるかが重要

 根管治療を成功させるためには、「歯科用CT撮影装置」「マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)」「ラバーダム」の3つの検査・治療機器が有用だという。

「先ほどお話ししたように根管は複雑な形状をしているため、一般的なレントゲン撮影では、根管の形状や病巣の状態を正確に写すことはできません。その点、さまざまな方向から患部を写せるCTの撮影画像は、レントゲンでは確認できなかった病巣や根管の状態を的確に把握できて、見落としを防げるのです。また、根管を拡大して自分の目で確認できるマイクロスコープも、正確な根管治療のためにプラスです」

 ラバーダムとは、治療を行う歯だけが露出するように、他の歯を含めた口全体を覆うゴム製のシートのことで、治療中の歯に唾液が流入しないようにする。

「唾液にはたくさんの細菌が含まれています。細菌を除去するために根管治療を行っている歯の中に唾液が入ってしまうと、唾液中の細菌がそのまま残って治療がうまくいかないケースがあるのです。ラバーダムを使用した根管治療では、治療成績が向上したり再治療になるリスクが減るという研究報告もあります」

 CTやマイクロスコープは高額で設置していない施設も多く、ラバーダムを使うような良心的な根管治療は手間もかかるため、中にはレントゲン撮影だけですぐに抜歯を勧めるケースもあるという。

 自分の歯を守るために根管治療を受けるなら、なるべくCT、マイクロスコープ、ラバーダムが揃っている歯科医院を選びたい。

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