世界は「BA.2」を越えてウィズコロナに向かっている 医療情報学の専門家が特別寄稿

花見に出向く人も増えたが…
花見に出向く人も増えたが…(C)日刊ゲンダイ

 まん延防止等重点措置が解除になり、プロ野球が入場制限なく開幕を迎えるなど、第6波がようやく収束しつつある。しかし、新規陽性者数の減少は期待ほどペースが上がらない。テレビからは「高止まり」といった言葉が聞こえてくるようになってきた。

 こんなときには、海外のトレンドを眺めてみるのがいいだろう。とくにヨーロッパ諸国の状況が重要だ。というのも、今までの経験から、日本の感染動向は、ヨーロッパの1~2カ月遅れで進行することが分かっている。

 そこで世界保健機関(WHO)のオープンデータを用いて、オミクロン株の流行期間(2021年11月1日以降)の新規陽性者数(7日間平均)を計算し、感染のピークを特定した。

 まずイギリスである。イギリスは最も早くピークを迎えた国のひとつで、昨年末(12月31日)からの1週間が最悪期であった。新規陽性者は319.3人(1日当たり・人口10万人当たり=以下同)に達した。その後は2月下旬までに50人以下に減少。ところが再び増加に転じ、3月17日からの1週間で2回目のピーク(126.8人)を迎えた。現在は減少傾向にある。

 オランダも同様で、2つのピークを示している。1回目は2月7日からの1週間(717.9人)、2回目は3月6日からの1週間(396.7人)である。現在は200人前後まで減少している。両国とも、1回目の山は、行動制限などの緩和とワクチンの3回目接種がまだ十分に進んでいなかったことなどが原因とされている。しかし2回目の山は、オミクロン株の新型が原因と考えられている。

 ご存じの通り、従来のオミクロン株はBA.1で、新型はBA.2と呼ばれている。BA.2は、BA.1よりも感染力が強い(だからこそ置き換わった)のだが、毒性(重症化率や死亡率)は同等かむしろ弱いと考えられている。

 イタリア、フランス、ドイツなどは1月中旬から2月上旬にかけて、相次いで1回目のピークを迎え、その後は新規感染者がいったん減少したものの、現在は2回目のピークを迎えつつある。これらの国でも、BA.1からBA.2への置き換わりが進んでいる。とくにドイツは、1回目のピーク(231.1人)よりも、現在の新規感染者数のほうが増えている(275.7人)。

 アメリカは、1月のピーク(244.9人)以降は順調に感染者を減らし、現在は8~9人で推移している。そのため多くの州では、マスクの着用すら解除されている。だがヨーロッパの動向を見る限り、早晩、BA.2による2回目の山が訪れる可能性が高いといわれている。

■2回目の山での対応が重要

 一方、お隣の韓国では、3月に入ってからピークを迎え(782.2人)、その後も高い水準が続いている。しかもBA.2への入れ替えも進んできたため、このままでは1回目のピークアウトが完了しないままBA.2のピークを迎えるのではないか、と心配されている。

 しかしいずれの国も、コロナ対策はワクチンと治療薬にシフトさせつつあり、行動制限や入国制限を大幅に緩和する政策に転じている。ウィズコロナを見据えた体制づくりに本腰を入れつつあるのだ。感染爆発と言っていい韓国でも、4月以降は入国者の制限を大幅に緩和する方針でいる。

 では、日本はどうだろうか。

 2月4日からの7日間がBA.1のピークだったが、諸外国と比べれば、かなり低い水準(75.1人)に抑えられてきた。ヨーロッパやアメリカだったら、躊躇なく行動制限などの緩和を進めるような数字である。現在は30人前後で足踏み状態とはいえ、各国と比べれば深刻とは言えない。

 日本でもウイルスの入れ替えが進んでいるようで、報道によれば、東京都の新規感染者の4割近くが、すでにBA.2になっているらしい。したがって、4月下旬ないしゴールデンウイークにかけて、もうひと山来る可能性が高い。

 それを第7波と呼ぶか、第6波の続きとみるかは、本質的な問題ではない。それよりも、そうなったときに再び行動制限を強化して社会を後戻りさせるのか、勇気を持ってウィズコロナに向かうのかが、より重要である。その決断に、日本の将来がかかっているように思われるのである。

(永田宏/長浜バイオ大学メディカルバイオサイエンス学科教授)

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