名医が答える病気と体の悩み

抜け毛が増えたかも…病気を心配すべき「薄毛」はある?

写真はイメージ
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 薄毛というと、成人男性を中心とした髪が薄くなる「男性型脱毛症」(AGA)が一般的です。それ以外の病気が原因となる薄毛には主に「脂漏性皮膚炎による脱毛症」「甲状腺機能低下症による脱毛症」「びまん性脱毛症」があります。びまん性脱毛症以外は、脱毛以外の症状も伴うのが特徴です。

 最初に「脂漏性皮膚炎」は、皮膚の常在菌であるマラセチアというカビ(真菌)の一種が増えることで発症します。菌が増える原因は分かっていませんが、皮脂の分泌異常、ビタミンB1・B2代謝異常、ストレス、睡眠不足、男性ホルモンの乱れが影響していると考えられています。男性に多い病気で、皮脂腺が多い頭や顔面などに湿疹ができ、とくに頭皮や鼻、耳に赤みが見られます。湿疹になった頭皮からうろこ状のフケがポロポロ出てきて、抜け毛の原因になっています。

 治療は、患部に抗真菌薬やステロイドの塗り薬を塗って炎症を抑えます。またマラセチアは脂肪成分を栄養にするため、皮脂を落として頭皮の清潔を保つよう患者さんに伝えています。

 次に「甲状腺機能低下症」です。代表する慢性甲状腺炎(橋本病)は、代謝をつかさどる甲状腺ホルモンの量が不足して新陳代謝が低下し、抜け毛の症状も伴います。抜け毛に加えて低体温、食欲不振、顔や足のむくみを訴える患者さんが多く、内科や精神科を受診し、採血検査で判明するケースが多いです。

 原発性の自己免疫疾患は根本治療が難しいですが、甲状腺ホルモン剤を服用して症状を抑えます。ホルモンバランスが整えば症状がよくなることもありますが、半年以上の長い時間がかかることが多いです。

 そして「びまん性脱毛症」は併発する症状が見られず、採血検査でも指摘されないケースが多いです。しかし、抜け毛(1日100~200本が正常)が多いと感じたり、局所的ではなくまんべんなく地肌が透けて見えるようになって受診に来られます。原因としては、頻繁にブリーチを行って頭皮に負担を与えていたり、ダイエットによる栄養不足、ホルモンバランスの乱れが関係しています。

 日本皮膚科学会によると、発毛剤に使われているミノキシジルの成分が有効とされています。皮膚科であれば状態に合わせた濃度で処方できますから、病院にかかってみてもいいでしょう。AGAは内服薬によって2~3カ月で薄毛が治り始めます。3カ月たっても効果が見られなければ、他の病気の可能性があるので、相談してみましょう。

▽飯島隆太郎(いいじま・りゅうたろう)2015年帝京大学医学部卒業後、帝京大学医学部付属病院腎臓内科、帝京大学ちば総合医療センター第三内科(腎臓)に勤務。21年10月からおおふな皮ふ科院長、22年1月L&P Medical代表理事。

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