小説やテレビドラマなどで、唾液や精液、毛髪などから犯人の血液型がわかる、というシーンを見かけます。しかしそれは、唾液や精液に血液が混ざっているからではありません(歯槽膿漏なら、混ざっているかもしれませんが……)。
実は血液型を決める糖鎖であるA・B・H抗原(O抗原)は、赤血球だけでなく、全身の細胞に広く分布しているのです。皮膚、口の中や消化器の粘膜細胞、気管の上皮細胞、毛根細胞、精巣や子宮の内側、さらには血管の内壁までも、血液型の糖鎖で覆われているのです。
それらは「組織血液型抗原」と呼ばれており、赤血球の糖鎖とは区別されています。といっても、血液型がA型なら組織血液型抗原もA型、B型ならB型、というように、両者は分子構造が完全に一致しています。組織血液型抗原が細胞表面から剥がれ落ちて、唾液や精液に混じっているため、犯人の血液型がわかるのです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。