腰痛のクスリと正しくつきあう

胃腸が弱い人の腰痛には多くの生薬からなる「五積散」が良いケースも

写真はイメージ
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 これまで、腰痛に対して用いられる漢方薬をいくつか紹介してきましたが、今回は「五積散(ゴシャクサン)」についてお話しします。

 構成生薬は蒼朮(ソウジュツ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、桔梗(キキョウ)、桂皮(ケイヒ)、厚朴(コウボク)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)、川芎(センキュウ)、大棗(タイソウ)、白芷(ビャクシ)、麻黄(マオウ)という15種類をベースにしています。これに、枳実(キジツ)、白朮(ビャクジュツ)、枳穀(キコク)、乾姜(カンキョウ)などを加えた方剤です。

 東洋医学でいう「寒・食・気・血・痰」がそれぞれ滞っている状態(積滞)の改善を目的としていることから「五積」という名がついています。体を温める、胃腸に良い、痛みをとる、血行を良くする、無駄な水分を取り除くといったさまざまな生薬が配合されていることから応用範囲が広く、腰痛、関節痛、座骨神経痛、頭痛なども改善するのです。

 非常に多くの生薬から成るため効果を感じるには少し時間が必要かもしれませんが、特に体に冷感があり、気温の低下や湿気によって調子を崩すような状態に向いています。

 また、胃腸の働きを高める働きもあり、感冒や急性慢性胃腸炎に使用する場合もあります。ですから、腰痛を訴える方の中でも特に胃腸が弱く、他に適した漢方薬がない場合には本剤を選ぶと良いケースがあるのです。

 さらに、川芎、芍薬、当帰といった補血や活血の生薬も配合されていることで生理痛や更年期障害などの改善も見込めるため、特に女性の腰痛に適しているともいえます。

 まとめると、五積散は気(体のエネルギー)の巡りや血流を良くして冷えを取り除く働きがあるため、冷え症かつ貧血気味で胃腸が弱い体質、そして主に上半身に熱感があり下半身の冷えがある方の腰痛に使用すると良いといえるでしょう。

 注意する点は、体力がなくひどく虚弱な「虚証」の方には向きません。また、配合されている麻黄には交感神経を刺激するエフェドリン類が含まれているため、血管や心臓に負担がかかる可能性もあります。心臓疾患や高血圧、脳卒中といった循環器系疾患の既往歴がある方は使用に注意しなければなりません。持病のある方は医師や薬剤師にお伝えください。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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