まぶたの重だるさ、頭痛、肩凝り…原因は「眼瞼下垂症」かもしれない

「腱膜前転法」の手術前(上)と術後6カ月(下)
「腱膜前転法」の手術前(上)と術後6カ月(下)/(古田淳院長提供)

 まぶたが垂れ下がる「眼瞼下垂症」は、加齢で起こりやすくなる。歌手の和田アキ子さん(72歳)が手術を受けたことでも知られる。

 記者(50代)は数年前から上まぶたに常に不快な重みを感じるようになり、この1年は視野が狭くなったような気がしてならない。何かを見る際にはよく見えるように目を見開くクセがついてしまい、友人から「眉毛と額だけが上がっている」と指摘された。額に力が入っているせいだろうか、1年でおでこのシワが確実に増えた。

 眼瞼下垂症を疑い訪れたのは、眼瞼下垂症の治療を多く行う「なでしこクリニック」(神奈川県)だ。古田淳院長(形成外科医)が言う。

「眼瞼下垂症は、上まぶたが垂れ下がり、目を開けたときの視界が狭くなる病気です。加齢や生活習慣で上眼瞼挙筋にある薄い膜状の腱膜が瞼板からはがれ、薄く伸びることで起こります」

 生まれつき(先天性)のものと後天性のものとがあるが、多数を占めるのは後天性。「ハードタイプのコンタクトレンズを長年装着している」「目をしょっちゅうこする」「目を酷使する仕事に就いている」などがあると、起こしやすい。

 主な自覚症状は、まぶたの重だるさや見えづらさ、頭痛や肩凝り。眉の位置が上がる、額のシワが深くなる、二重の幅が広がる、左右の目の大きさが違う、目がくぼむなど容貌の変化もある。まさに、記者だ。

「自覚症状があり、日常生活に支障が出てきたと感じる人は、眼科もしくは形成外科に相談することをお勧めします。まぶたの下がり具合、まぶたの動く距離を計測し、眼瞼下垂症を診断します。後天性の眼瞼下垂が頭痛や肩凝りの原因となっていることもあり、それらが治療で解消した患者さんもいます」

■治療で「生活の質」がアップする

 治療は、二重の線に沿ってまぶたを切開し、はがれた腱膜を瞼板に再固定する「腱膜前転法」が一般的。まぶたの下がりが強い重度の眼瞼下垂症では保険適用となることが多い。

「腱膜前転法の手術を行うと、眉と額を上げて目を開けなくても簡単に目が開くようになりますが、眉と上まぶたの皮膚が下がってきます」

 目と眉の距離が短い人や皮膚がたるんでいる人は顔が変わり、不自然な印象になることもある。

「まぶたの皮膚は、まつげに近いほど薄く、眉に向かうほど厚くなっています。たるみを取るためにまぶたの皮膚をたくさん取ってしまうと、薄い皮膚と厚い皮膚が縫い合わされ、どうしても術後が不自然な顔になってしまうのです」

 その「不自然さ」を解決するために、ここ数年多く行われるようになったのが「眉下切開法」だ。眉下の厚い皮膚を切ってまぶたの皮膚を引き上げる。薄い皮膚の面積が多くなるため、若い頃のまぶたに近くなり、「不自然さ」も少なく、「若くなった」と言われることも。

 術後の腫れも少なく、傷痕は1週間ほどで目立たなくなる。しかし、眼瞼下垂症と診断された場合でも、眉下切開法は「美容目的」とみなされ、どの病院でも自費診療となる。眼科では行っていない場合もある。

「まず眉下切開法で上まぶたのたるみを取り、それで不十分なら、後日まぶたを切る腱膜前転法を行う方もいます」 記者は取材時、古田院長からずばり「眼瞼下垂症だと思いますよ」と指摘された。診断用のクリップでまぶたを挟み、見え方が変わるかどうかのテストを受けたところ、視界が広がり、ものの見え方がかなり変わって驚いた。QOL(生活の質)を上げるためにも、手術を前向きに検討中である。

関連記事