同じ病棟のB子さんは急速に進むタイプの悪性リンパ腫でした。3回目の入院の時、B子さんは担当のD医師に言いました。
「D先生、私の家は焼き鳥屋なんだ。私が治ったらさぁ、先生、店に来て。うちの焼き鳥、うまいんだよ。においがするから病院には持ってこられないしね」
D医師は「よし、行くよ」と答えました。
しかしその後、B子さんは焼き鳥の話をしなくなりました。治療後、一時的にリンパ腫が小さくはなっても、すぐに大きくなって病状は厳しくなり、個室に移ることになったのです。
時々、A君たちがこっそりB子さんの病室を訪ね、病院のスタッフはそれを見て見ぬふりでした。2カ月後、B子さんは亡くなりました。
A君は、亡くなったB子さんの部屋に入りたいとスタッフに頼みました。結局、死後の処置(エンゼルケア)の後、A君は仲間の患者と一緒にB子さんの病室に入り、葬儀社が来るまでの間、泣きながらギターを弾きました。B子さんのご家族は、涙しながらじっと聴いていました。
がんと向き合い生きていく