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ワクチンと人工妊娠中絶をめぐり、米国で保守とリベラルが激しく分断

中絶反対の看板をフェンスに掲げる高校(ケンタッキー州)/(C)ロイター

 もうひとつがコロナワクチンの可否。やはりトランプ前大統領の影響ですが、アメリカでは反ワクチン派や反マスク派、ここから派生した陰謀論者も保守派が支配的で、これは中絶反対派のグループとも重なってきます。

 ところが、彼らの主張に大きな矛盾があると指摘するのはリベラルです。ワクチンやマスク反対の根拠として、中絶を支持する擁護派とまったく同じスローガンを掲げているからです。

 ワクチン反対派は「私の体のことは自分で決める」と接種拒否を正当化していますが、中絶擁護の伝統的なスローガンも同じ「私の体のことは自分で決める」です。つまりまったく同じ主張なのに、中絶に関しては認めないという矛盾が生じているのです。

 これに保守政治家ものらりくらりと乗っかり、その結果、分断に振り回されるのは一般市民という、この状況そのものが“アメリカ病”という批判も少なくありません。

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シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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