コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

全国20カ所以上で活躍「心房細動診断AI」は何が凄いのか

受診時に症状が出るとは限らず見つけられないことも多い(写真はイメージ)/
受診時に症状が出るとは限らず見つけられないことも多い(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 不整脈の中で最も患者数が多く、国内の患者数は推計100万人とされ、診断されていない潜在患者も同程度いるとみられている「心房細動」。

 心臓の部屋(心房)が小刻みに震え、血液が停留しがちになるので、血栓が形成されて脳に飛べば重度の脳梗塞を引き起こす。

 心房細動を早期に発見できれば、血栓予防薬の投与などにより発症を抑えることができるが、そう簡単ではない。動悸や胸の不快感など心房細動の発作があっても、医療機関の受診時には症状が治まっていることが多いので、心電図に異常が見られないケースがほとんどだ。

 精密検査ではホルター心電計を24時間装着して心電図を記録する方法がある。しかし、脈の乱れがあってもそれが本当に心房細動なのかの判断は専門医でないと難しい。そんな心電図データを解析し、AIによって心房細動の診断をサポートする「心房細動診断AI」が実用化され、現在国内20施設以上の医療機関で導入されている。

 開発したのは国際医療福祉大学教授の現役医師が2019年に起業した「㈱カルディオインテリジェンス」(東京都港区)。同社の田村雄一CEOが言う。

「このAI解析システムは、健常者や心房細動患者さん約2000人分の心電図データ(1人当たり10万心拍以上のデータ)を使い、心電図波形から心房細動を自動診断できるアルゴリズムを利用しています。このシステムに心電図データを読み込ませると、心房細動の発作が起きていた箇所を示します。診断精度は98%なので、専門医でなくても治療につなげることができるのです」

 このAIは、大量のデータから自動的に特徴などを抽出・分析する「ディープラーニング(深層学習)」という技術を応用している。しかし、ディープラーニングには、なぜその答えが出たのか、その根拠が分からず、モデルがブラックボックス化する課題がある。

 同社開発のAIの場合は、高精度で心房細動を検出するだけでなく、診断根拠を提示できるのが特徴。非専門医でも診断の根拠になる特徴を知っていれば、確実な診断につなげられるわけだ。

「さらに、過去の心電図データの発作を読み取るだけでなく、発作が起きていない正常とされる心電図の中から、心房細動の発作を予測するタイプのAIも開発中です。これは『兆候検出』といって、心房細動を起こしやすい体質かどうかを判定してくれます」

 新しいタイプのAIは現在治験中で今年5月には終了し、承認申請を行うという。

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