役に立つオモシロ医学論文

コロナワクチンの子どもに対する効果は? 世界的医学誌で報告

子どもに対する接種も、12歳以上の接種と同様に意義がある
子どもに対する接種も、12歳以上の接種と同様に意義がある(C)ロイター

 2022年1月、厚生労働省は5~11歳の子どもに対するファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンを特例承認しました。

 成人に対する同ワクチンの効果は、すでに複数の研究論文で優れた有効性が示されています。しかし、子どもに対する効果については、質の高い研究データが限られており、その有効性や安全性については、専門家の間でもさまざまな議論がなされていました。日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会は「5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある」とした見解を公表しています。

 そのような中、世界的に有名な医学誌のひとつ「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の電子版に、子どもに対する新型コロナウイルスワクチンの有効性を検討した研究論文が、2022年3月30日付で掲載されました。

 2021年7月1日から2022年2月17日までの間に行われたこの研究では、ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンの有効性が検討されました。対象となったのは、米国の小児病院に入院した5~18歳の2812人で、このうち5~11歳に対するワクチンの有効性については、新型コロナウイルス感染症で入院した267人と、新型コロナウイルス感染症以外の理由で入院した270人が対象となっています。

 被験者のワクチン接種状況を調査し、入院リスクとの関連性を統計的に解析した結果、ワクチンの接種は、新型コロナウイルスに関連した入院を68%低下させることが示されました。論文著者らは「子どもに対するワクチン接種は、新型コロナウイルス感染症による入院リスクを3分の2減少させた一方で、重症感染者の多くはワクチンを接種していなかった」と報告しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

関連記事