時間栄養学と旬の食材

【エリンギ】キノコ特有の抗酸化成分エルゴチオネイン 血中濃度が高いと死亡率が低い

エリンギ
エリンギ

「エリンジウム」というセリ科の植物が枯れたところに生えることから、イタリアで「エリンギ」と呼ばれるようになったキノコです。

 ヨーロッパでは古くから食用として親しまれ、柄の部分よりも傘の開いた部分が好まれていますが、日本では主に柄の部分も好んで食べられています。

 もともとエリンギは南フランスやイタリアなど地中海性気候の地域を中心に自生するキノコですが、1993年ごろに愛知県の林業センターが人工栽培を確立してから日本中に広まり、全国各地で商業栽培が行われるようになりました。日本のエリンギは自生しているものがないため、基本的に旬はありません。クセがなく、コリコリとした食感はどんな料理にも合うので使いやすい食材といえるでしょう。

 そんなエリンギにはどんな栄養素が含まれているのでしょうか。まずは100グラムあたり3.4グラム含まれている食物繊維。特に多いのが水に溶けにくい性質を持つ食物繊維で、水分を含んで膨らむことで胃や腸を刺激し、排便を促してくれます。腸内環境を整える効果や生活習慣病の予防にも効果が期待できます。

 昨年、米国人の成人に対する論文で、米国の国民健康栄養調査と国民死亡指標という国家ベースで集めた大規模データを解析したものがあります。ここでわかったことが、キノコを食べている人は、人種、性別、ライフスタイル、カロリーや栄養素の摂取、喫煙、アルコール摂取など、キノコとは別の要素による影響を除いたとしても、死亡率が有意に低いということでした。その要因のひとつとして、キノコに特有の抗酸化成分「エルゴチオネイン」が関係しているからと筆者たちは考察しています。また、一昨年発表されたスウェーデンの研究でも、エルゴチオネインの血中濃度が高い人ほど死亡率が低いともいわれているので、効果についての信憑(しんぴょう)性は高そうです。

 このエルゴチネオイン、実は日本でよく食べるヒラタケに次いで、エリンギに含有量が多いこともわかっています。100グラムあたり19キロカロリーと低カロリーで、ダイエット中のボリュームアップ食材にもピッタリ! 健康長寿のためにもぜひ、食卓に並べていきたい食材です。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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