こうしたコロナウイルスの事例から、医学が進歩した現代にあって、ウイルスがヒトと共存していくためには、いくつかの条件を満たす必要があることが分かる。まず、①「低い重症化率・致死率」②「強い感染力」の2つを満たさなければならない。とくに①が重要である。重症化率や致死率が高いと、社会はあらゆる手段を講じて感染拡大を防ごうとする。今回の新型コロナでは、社会の仕組みすら変えてしまうほどの措置が取られた。
①の条件が十分に満たされない場合は、③「ワクチンや治療薬が必要」になる。それによって重症化率や致死率が下がれば、ウイルスの危険度が相対的に低下し、①を満たしやすくなる。
ただしワクチンが効き過ぎると、ウイルスにとってはすみにくい。そこで②の「強い感染力」が必要になる。感染するヒトが増えれば、ウイルスが生き残るチャンスも増える。さらにワクチンをほどよく回避するために、④「ときどき適度な突然変異を起こす」ことができれば、ほとんど安定的にヒトと共存し続けられる。最近の新型コロナウイルスと医学の動向を見ると、まさにこの4つの条件を満たす方向に進んでいることが分かる。