腰痛のクスリと正しくつきあう

女性向けイメージがある「当帰芍薬散」はタイプにより男性にも

写真はイメージ
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 腰痛に使われる漢方薬について、今回は「当帰(トウキ)」にスポットを当ててお話しします。

 当帰はセリ科の植物で、その根を乾燥した部分が生薬として用いられます。栄養素を全身に巡らせる働きがある「血(ケツ)」を補う作用があるとされ、血液循環を改善することで体を温め、水分代謝を整えることで余分な水分を体から取り除くので、特に足腰に強い冷えを伴う腰痛に向いています。

 当帰を含む漢方薬で代表的な方剤が「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」です。芍薬(シャクヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、川芎(センキュウ)、当帰(トウキ)、そして蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)の6種類の生薬で構成される漢方薬です。

 冷え性や生理不順といった婦人病に使用される場合が多いので、女性向けのイメージがありますが、貧血傾向で冷えが強く、下腹部痛があり、耳鳴りやめまいなどの症状を訴えるタイプの腰痛に対しては男性も試す価値があるといえます。

 また、特に冷えや痛みが強い場合は附子(ブシ)を加えた「当帰芍薬散加附子(トウキシャクヤクサンカブシ)」、胃腸が弱い方は人参(ニンジン)を加えた「当帰芍薬散加人参(トウキシャクヤクサンカニンジン)」で対応するケースもあります。

 ほかにも「当帰四逆湯(トウキシギャクトウ)」は、冷えがあり、下肢や下腹部の痛みが強い腰痛に使用されます。構成生薬は、大棗(タイソウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、木通(モクツウ)、甘草(カンゾウ)、細辛(サイシン)の7種です。さらに冷えがひどければ、ここに呉茱萸(ゴシュユ)と生姜(ショウキョウ)を加えた「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)」を使うと良いでしょう。

 いずれも主に慢性的に体力や気力が衰えた状態の「虚証」、かつ体に冷えがある「寒症」の方に向く漢方薬です。また、副作用として発疹やかゆみなどの皮膚症状、胃の不快感や食欲不振といった消化器症状が報告されているため、胃腸が弱く吐き気、嘔吐(おうと)、下痢などを起こしやすい人は慎重に使う必要があります。

 腰痛の症状、自身の体質は人によって異なります。自己判断は避けて、詳しくは医師や薬剤師に相談してください。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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