五十肩を徹底解剖する

「腱板断裂」の治療でまず行うのは注射による痛みの鎮静

写真はイメージ
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 単なる「五十肩」ではなく、実は肩の腱が切れてしまった腱板断裂による肩の痛み。今回は腱板断裂の治療についてお話しします。

 前々回の本欄で、みなさんが想像しやすい「腱断裂」として、足首のアキレス腱を例に出してみました。

 アキレス腱を切ったときは、通常すぐにギプスで固めたり、手術をして腱を縫ったりします。つまり、腱断裂の治療はまず何よりも腱をつなげることが大事になります。

 アキレス腱は足首を触れるとわかるように、1本の筋で成り立っています。一方、肩の腱板は全部で4本の筋肉の集まり。腱板断裂が1本だった場合、見方を変えれば3本はまだつながっているということになります。

 腱板は複数の腱が協力して働くため、1本が断裂しても残り3本が断裂分を補って働けば、意外と症状なく動いてくれるのが特徴です。団体スポーツのサッカーにおいて、1人の選手が退場になり劣勢になっても決して敗退が決まったわけではありません。残りの選手が団結できれば勝つこともありますね。

 単独で働くアキレス腱断裂と異なり、チームで働く腱板断裂の治療では、断裂した腱板をつながなくても治療できないかと考えます。まず行うのは、痛みの速やかな鎮静。患部に焦点を合わせた注射治療を提案しています。またご自宅では、飲み薬や貼り薬を用意します。

 注射の中身は、凍結肩の炎症期と同じくステロイド剤をよく用います。ただし、持病などがあると使えないこともあるので、受診時には持病やアレルギー歴をメモしておいたり、お薬手帳や健康診断の結果のコピーを持参するとよいでしょう。

 痛みが取れれば、リハビリを行います。胴体と腕をつなぐ肩関節の筋肉は17個あり、そのうちの4つが肩腱板。残った腱板だけでなく、腱板周囲の筋肉も鍛え、チームプレーができるようにします。

 リハビリの具体例は別の機会に紹介しようと考えていますが、理想的には通院してリハビリの先生に直接指導を受けながら行う方が効率的かと思います。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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