名医が答える病気と体の悩み

おならの回数や臭いから隠れている病気が分かりますか?

消化器外科の白畑敦氏
消化器外科の白畑敦氏(提供写真)

「おなら」は、腸内細菌が食べ物の消化を促進する際に、口や鼻からのみ込んだ空気と合わさって発生するガスです。窒素、酸素、水素、二酸化炭素、メタンなどが成分で、基本的には無臭です。

 回数は成人で1日7~20回が平均といわれています。一般的に回数が多い場合、腸内に便とガスがたまってしまう「便秘」が多いでしょう。ほかに「ストレス」もあります。緊張して唾をのみ込む回数が多くなり、空気も一緒に取り込むことでお腹が張ってしまうためおならが出ます。

 また「早食い」の方も、噛む回数が少ないので唾液の分泌量が少なく、空気を余分に体内に取り込んでしまいがちです。いずれも、腸内のバランスも崩すため、悪玉菌が増殖し、臭いが伴うことが多いです。

 おならの回数や臭いで消化器系の疾患が判明するケースもあります。まず、おならの回数が極端に減って、お腹の張りなどが伴う場合、「大腸がん」の可能性があります。大腸が腫瘍で細くなることでガスが詰まってしまい、おならの回数が極端に減ってしまうのです。

 中には、「腐ったような臭いのおならがたくさん出る」と言う患者さんもいますが、多くはおならの回数が極端に減って、同時にお腹の張りや痛み、吐き気を伴うケースで発覚します。回数の目安としては1日5~7回以下で、1回の出る量も減ったと感じる状況が数週間続いたら、病院で相談してみましょう。

 逆に1日平均15~20回を超えるおならが続く場合、腸の炎症による疾患の可能性があります。たとえば、「過敏性腸症候群」はストレスとの関係が深く、自律神経が乱れるため、主に腹痛や下痢になります。

 指定難病の炎症性腸疾患「クローン病」も考えられます。小腸や大腸に炎症や潰瘍ができる慢性疾患で、腹痛や下痢、血便などに加えておならの回数が増えます。「潰瘍性大腸炎」も、おならがたくさん出ます。腸に潰瘍やびらんができる病気で、腸内に炎症ができるため、臭いの成分である硫化水素が発生しやすくなって、アンモニア系の臭いになるのも特徴です。

 おならは、回数の増減のほか、臭いで判断するなら「腐敗臭」や「血生臭さ」があった場合、医療機関にかかることをおすすめします。

▽白畑敦(しらはた・あつし)2002年に昭和大学医学部卒業後、07年に昭和大学藤が丘病院消化器外科助教、その後、関東労災病院外科、横浜旭中央総合病院外科、昭和大学藤が丘病院兼任講師などを経て、現在はしらはた胃腸肛門クリニック横浜院長を務める。

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