子宮頸がん発症予防のワクチン接種は本当に必要なのか? 4月から定期接種が再開

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 4月から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの定期接種(公費負担で無料)の積極的勧奨が再開している。産婦人科医であるジャスミンレディースクリニック院長の近藤一成医師に話を聞いた。

 20~30代の女性に最も多いがん、子宮頚がんは主にHPVの感染で発症する。HPVワクチンは、HPVの感染を予防するワクチンだ。

「子宮頚がんは、たとえ早期で発見され手術でがんを摘出できても、子宮温存の円錐切除術は不正出血や妊娠時の流産、早産を起こしやすくします。進行がんでは予後が良くなく、排尿障害や直腸障害が起こりますし、子宮全摘では将来の妊娠は不可能になります」

 近藤院長は研修医時代から、幼い娘の行く末を心配しながら亡くなっていく患者、子宮全摘で子供が産めなくなったことから離婚に至った患者らを多数見てきた。子宮頚がんの主原因はHPVなので、この感染を防げればかなりの確率で子宮頚がんの発症を抑制できる。だからこそ、HPVワクチンを適切なタイミングで打つことは非常に重要だと強調する。

「性交渉の経験がある人の8割は生涯に一度はHPVに感染します。そのうち一部の人は感染が持続し、前がん病変を経て子宮頚がんを発症する。つまり、HPVに感染する前、最初の性交渉を行う前のワクチン接種が最も望ましいのです」

 HPVが性交渉で感染するため、「子宮頚がんは性交渉の経験数が多い人が発症する病気」という偏見がある。まったくの誤解だ。たった一度の性交渉でも発症する人は発症する。性交渉の経験があれば、だれでもリスクがあると考えるべき。

 HPVワクチンの定期接種の対象は、小6から高1の女性だ。

 加えて、1997年度生まれ(今年25歳)から2005年度生まれ(同17歳)の女性。日本では2013年4月にHPVワクチンが子宮頚がん予防の定期接種になったものの、同年6月には積極的勧奨差し控えとなったため、再開が決定されるまでの8年の間に定期接種の機会を逃してしまった女性たちだ。定期接種と同様に公費負担で無料。期間は3年間。

■検診で早期発見を目指すのでは不十分

 海外の研究では、接種年齢が若いほど感染予防効果が高いとの結果が出ている。定期接種、接種逃し世代(前述の1997年度生まれから2005年度生まれの女性)ともに、できる限り早い接種がお勧めだ。一般的に6カ月間に3回打つ。

「接種逃し世代の対象者で、8年前に1回または2回接種していた人は、残りの回数(1回すでに打っている人は残り2回、2回の人は残り1回)だけを受けてください」

 最初の性交渉前にワクチン接種ができればベストだが、性交渉経験があっても、接種時点でHPVに感染していなければ、HPVワクチンの恩恵を得られる。だから、接種逃し世代の対象で性交渉経験済みでも、受けた方がいい。

 HPVワクチンの定期接種の積極的勧奨が8年間差し控えられていたのは、疼痛や運動障害など多様な症状が報告されたから。これに関しては、名古屋市大の大規模疫学調査、厚労省の全国疫学調査、海外の膨大なエビデンスで「HPVワクチンとの因果関係がない」と証明されている。

「諸外国ではHPVワクチン接種がかなり進み、子宮頚がんの患者数は激減しています。スウェーデンでは17歳未満で接種した場合、31歳の誕生日までに子宮頚がんを発症した率は88%減少し、イングランドでは12~13歳接種で発症リスクが87%減少している。50年後には子宮頚がんはなくなるだろうという話もあり、日本だけが“風土病”のように残っていくのではと危惧しています」

 子宮頚がん検診で早期発見すればいいのでは? という声もよくある。

 しかし、検診での早期発見は2次予防であり、治療には不正出血、妊娠時の流産、早産などを起こしやすくする面もある。子宮頚がんの1次予防は、HPV感染を防ぐこと。ワクチン接種が不可欠なのだ。

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