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国立感染症研究所がひっそり認めた「空気感染」で対策が大きく変わる?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 国立感染症研究所は先月28日、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について」との一文をホームページに掲載した。その中でこれまでかたくなに認めてこなかった「空気感染」をさりげない形で認めている。

「液体を含んだ大きな粒子は、放出されてから数秒から数分以内に落下するが、小さな粒子や乾燥した粒子は、空中に数分から数時間にわたって浮遊する」

 ここで言う、「乾燥した粒子」はウイルスそのもので、明らかに空気感染のこと。なぜ、年度変わりの時期に感染経路の認識を変えたのか? 公衆衛生に詳しい、岩室紳也医師が言う。

「今回、液体を含んだエアロゾルによる感染と粒子そのものの空気感染が同レベルで語られていることは感染経路対策の視点から見ると問題ですが、もともと新型コロナ感染症は空気感染するのではないか、という意見が国内外にあり、昨年10月に研究者らが公開質問状を感染研に出していました。その後、感染研と同様に当初空気感染を認めていなかったWHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病対策センター)など世界中の研究機関などが段階的に修正し、いまでは空気感染の存在を認めています。そこで年度末をきっかけにさりげなく修正したということでしょう」

 気になるのは武漢型の新型コロナから変異を繰り返す中で空気感染するようになったのではないか、という疑問だ。

「そうではないでしょう。感染研が参考文献に挙げているのは昨年末のWHOなどが出した感染経路に関する文章。最近、感染が拡大しているオミクロンBA.2が出現する前のものです。しかも、対策として感染研も部屋の換気をしつこく言ってきました。実質的にはエアロゾル感染、空気感染の可能性を認めてきたということでしょう」

 とはいえ、空気感染ということになると、感染対策は変わるのではないか。

「現在、日本で空気感染するとされる感染症は、結核、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)です。医療現場で空気感染の予防の基本は、0.3マイクロメートルの大きさの結核菌や新型コロナウイルスのエアロゾル感染を予防するためN95マスクの使用が常識ですが、0.1マイクロメートルの新型コロナウイルスの空気(飛沫核)感染を予防するにはN95マスク以外の方法が必要です。単にドアや窓を開けた換気をするだけでなく、感染している人の風上に立つ。換気扇やサーキュレーター、扇風機などで空気の流れをつくり、ウイルスを室外に排出、排気することが大切です。マスクをしているとエアロゾルの排出が増え、そのエアロゾルが乾燥してウイルスそのものになることを含めて考えると、『状況によってマスクをしないという選択肢も検討する必要がある』ということへの序章を感染研が打ち出したのかもしれません」

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