医者も知らない医学の新常識

「パルスオキシメーター」 日本人では数値が正確でない可能性

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、注目されている健康機器が「パルスオキシメーター」です。これは指にはめるクリップのような小さな機械で、動脈血酸素飽和度という、体に酸素が足りているかどうかの指標を簡単に測定することができる便利な装置です。

 その数値が96%を下回っていると、体に酸素が足りない可能性があります。そのために、新型コロナウイルス感染症の重症度判定においても、酸素飽和度96%以上が軽症かどうかの基準になっているのです。しかし、この数値は常に正確なのでしょうか? 実はそうではないことが最近、世界的に問題となっています。この機械は指先に光を当てて、どの光を血液が多く吸収するかを測定しているのですが、その数値は皮膚の色素の量が多いと、実際より低く測定されてしまうのです。

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は去年の2月に安全性情報を出していて、皮膚の色素が少ない白人と比較して、アジア人を含む有色人種では数値が実際より低くなることを警告しています。今年の呼吸器学の専門誌に掲載された論文によると、実際に血液で測定された酸素飽和度と比較して、アジア人ではその数値が5%以上も低くなっていたのです。

 パルスオキシメーターの数値が正常でも、それだけで安心とは言えないかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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