検尿の結果に注意! 「ちょっとだけ蛋白尿」でも腎機能は低下している

軽視は禁物
軽視は禁物

 健康診断は5月、9月に行われることが多い。もし健診で「蛋白尿が出ています」と言われたら要注意だ。自覚症状がなくても、腎機能が低下しているかもしれない。

 尿に蛋白が出ているかどうかは、検尿でわかる。日本腎臓学会理事長で、川崎医科大副学長の柏原直樹医師によれば、検尿は簡単で安価だが、腎臓に関する重要な情報を示す検査だという。

 健診では、蛋白尿が出ていなければ「-(マイナス)」、出ていたら「+(プラス)」。さらに、蛋白量が30㎎/デシリットルであれば「1+」、100㎎/デシリットルであれば「2+」。数字が大きくなるほど蛋白量が多いということになる。

 蛋白尿は、運動、発熱などで出る一過性蛋白尿や、立位で蛋白尿の排泄が増える起立性蛋白尿もある。だから、再度の検尿が必要だ。

 しかし、医師によっては「『1+』くらいなら大丈夫でしょう」「尿にちょっと蛋白が出ている程度ですね」「様子を見ましょう」などと言い、重要視しない場合がある。

「そのような場合も軽視することなく、再検査を受けることをお勧めします。蛋白尿が出ているということは、腎機能が低下した慢性腎臓病(CKD)を発症している可能性がある。蛋白尿の原因をはっきりさせないと、CKDを否定できません。そして腎機能は少し悪いレベルでも、心筋梗塞、脳卒中といった心血管疾患リスクが高くなることがはっきりとわかっています」(柏原医師=以下同)

■人工透析を回避するには早期発見と早期介入が必要

 腎機能の異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合がCKDだ。腎臓病にはさまざまな種類があるが、CKDは、慢性に経過する全ての腎臓病を指す。

 CKDは、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症、肥満といった生活習慣病。喫煙、食塩の過剰摂取、過度の飲酒といった生活習慣。加齢、遺伝などが絡んで発症、重症化する。

 CKDが進行すると腎機能のほとんどが失われる腎不全となり、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかの治療が必要になる。日本では、血液透析を受ける患者が圧倒的に多い。全国腎臓病協議会などの調査では、透析患者の97%が週3回以上透析治療を受けており、89%が透析1回につき4時間以上かかっている。日常生活における負担が非常に大きい。

「また血液透析は、血液の出入り口になるシャントを手術でつくらなければならないのですが、次第に動脈瘤が発生したり詰まったりし、場所を変えて新たにシャントをつくらなければなりません。やがてはシャントをつくれる場所が限られてきます。さらに、シャントの手術をできる専門医が、特に地方ではごく少数です」

 透析を受けていること自体、健康な状態ではない。心不全、感染症、脳卒中、認知症を起こしやすくなり、生命予後も、透析でない人と比べて短くなる。

「つまり、なんとしてでも透析に至らないようにしたい。そのためには腎機能低下を一刻も早く見つけ、早期に介入する必要があります。ただCKDは、進行して透析直前になるまで自覚症状に乏しく、発見されづらい。そこで早期発見として役立つのが、前述の検尿なのです。大事なのは、結果が蛋白尿1+のように軽症でも、決して軽視しないということです」

 CKDの早期発見にもうひとつ役立つのが、血液中の老廃物のひとつ「クレアチニン」を調べる血液検査だ。

 クレアチニン値がわかれば、年齢、性別から「推算糸球体濾過値(eGFR)」が計算できる。クレアチニン値、年齢、性別を入力するだけで自動的にeGFRを計算してくれるサイトがいくつかあるので、利用するといい。eGFRが60を下回るなら、直ちにかかりつけ医へ相談しよう。

「CKDの多くは、早期介入によって完璧に重症化を抑制できます」

 問題は、CKDについて、認知度がまだまだ不十分であること。今年以降、健診では、蛋白尿とクレアチニンの数値にも着目したい。

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