五十肩を徹底解剖する

腱板断裂ですぐ手術が必要なケースはまれ 半数超が保存療法

写真はイメージ

「五十肩」と思っていた肩の痛み。実は、肩の腱板が切れた腱板断裂とわかった瞬間、手術を覚悟して青ざめてしまう方が時折見られます。しかし私の経験上、すぐ手術をしなければならないのはごくまれです。おおよそ半数を超えるケースで、保存療法によって十分治療できています。

 肩に限らず関節の悩みごとは、主に「痛み」「曲げ伸ばししづらい(動き)」「力が入らず、上がらない・支えられない(力)」の3つに分類されます。なお肩の場合、もうひとつ「外れやすい」が、頻度が高く特徴的ですが、本稿では割愛します。

 そのため、肩の治療を評価するにあたっては、①肩の痛みが取れ②自在に腕を伸ばし、回すことができ③物を持ち支えられる──が、どこまで達成でき、満足できたかを考えています。腱板断裂の話なのに「腱が切れた」「腱がつながった」を第一に考えていないことが興味深いですね。

 頭の中で整理しやすいよう、悩みごとを3つの要素に分けましたが、この「痛み、動き、力」は独立しているわけではなく、お互いに影響しあっています。例えば、痛みが出るためバンザイをしようとしても十分に腕を伸ばせないなどです。

 さらに、患者さんごとに持ち合わせた背景により満足の基準は変わってきます。

 具体的には、痛めたのが利き手側か。机仕事か肉体労働か。仕事の調整が許されるか。運動習慣があるかどうか。野球やテニスなど肩を大きく使う種目か。趣味レベルか、勝負にこだわるか。どのくらい治療に時間を割けられるのか。手術治療に抵抗感が強いのか。

 こういった背景も加味し、そのまま保存療法を続けてよいか、手術まで勧めなくても済むかを考えています。単純にまとめると、直感的にさほど困ることがなく不安も取れてきていればひと安心と考えて良いかと思います。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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