最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

充実した在宅医療を実現するためにいま私が考えること

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高齢化が進み、疾病を抱える方や介護を必要とする方が増えていくと予想される中、在宅医療の果たす役割の重要度は、年々増していくとこれまでこの連載でお伝えしてきました。

 この連載がスタートしたころ(2020年12月2日付号)と比べても、その変化は顕著です。同年に始まったコロナ禍による生活スタイルの激変という、誰もが予想しなかった事態となったことで、なおさら安心安全な自宅で療養するという在宅医療の特性が際立ち、実際にそれをきっかけに入院から切り替えた方も少なからずいらっしゃいました。

 そんな中にあって、改めて大切な価値として見直されたのが、自分たちが住み続けてきた地域で、自宅で自分らしい暮らしを最期まで続けていくということです。この考え方は、今後もますます重要視されていくでしょう。そしてそれを下支えするのが在宅医療の役割と考えています。

 今後もより安定的で充実した「在宅医療」を実現するために、さまざまな社会的な課題を解決していかなければなりません。

 その課題のひとつが、在宅医療を担う医師の不足です。これには2つの解決策があると考えます。

 まず、患者に寄り添える力のある医師の数を増やす。次に、在宅医療にかかわる医師の労働量を抑え、本来やるべき診療という仕事に集中できるように、周りの医療従事者のサポートをシステムとして行う。

 ちなみに我々あけぼの診療所では、これまでにもお伝えしてきました通り、医師や看護師だけでなく、診療所で働く全スタッフを、診療パートナーと名付け、患者さんやさまざまな作業情報を、SNSなどの機器を駆使しながら共有し、全員で各種作業を共有して当たっています。

 そもそも「在宅医療」はさまざまなスタッフで支えられています。介護福祉士、ヘルパーさんや、地域の在宅ケアシステムをコーディネートしていただくケアマネジャーさんらです。

 実際の現場では、患者さんの入浴や食事のサポートといった介護が必ず必要になりますし、そのためにも、多種多様な方々との連携が大切になってきます。

 この連携がこの「在宅医療」を支えているということを分かっていただきたいのです。決して医師と看護師だけが往診するのではないのです。

 かねがね「在宅医療」は患者さんやご家族にとってテーラーメードな医療であるともお伝えしてきましたが、こうした方々と医療従事者がどれほど連携体制をとれるか。今も、これからも、在宅医療の重要課題であり、そのためにも地域との連携をしっかりと組み立てていかなければなりません。

 こうした「在宅医療」に対する理解が深まるように、今後もさまざまな場面で発信し続けていきたいと考えています。(おわり)

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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