医者も知らない医学の新常識

心不全に「減塩」は有効なのか 世界的な医学誌が問題提起

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 塩分をとりすぎると、高血圧や心臓病など、多くの病気のリスクが上がることは間違いありません。水だけをたくさん飲んでも体はむくみませんが、水分と塩分を同時にとると、体に水がたまってむくみが出るのです。塩分が多いと心臓に負担がかかり、血圧は上昇します。

 したがって、健康のためには塩分を制限することが望ましいとされ、厚生労働省では男性で1日7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満に、食塩の摂取量を減らすように提言しています。WHO(世界保健機関)はさらに厳しく、1日5グラム未満の減塩を推奨しています。

 たしかに1日10グラムを超えるような塩分が、体に良くないことは間違いがありません。ただ、1日5グラムを切るような減塩は、本当に体に良いのでしょうか? 過度の減塩は免疫力を低下させるという研究結果もあり、その点はまだ証明されているとは言えません。

 今年の「ランセット」という一流の医学誌に、心不全の患者さんにおける減塩治療の有効性を検証した論文が掲載されています。心不全では減塩を厳しく行うことが予後改善のために重要と考えられています。

 そこで、通常の治療と比較して、1日4グラム未満という高度の減塩を指導したところ、患者の経過に明確な違いは認められませんでした。

 薄味を心がけることは健康のために必要ですが、徹底した減塩についてはまだ議論の余地がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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