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米政府機関の「マスク義務付けは違法」判決で市民は大混乱

マスクを着けてブライアント公園でスケートを楽しむ子供たち(C)ロイター

「連邦政府によるマスク義務付けは違法」というフロリダ州の連邦判事による判決で、アメリカ全土に混乱が広がっています。

 4月18日に出たこの裁定は、フロリダ州をはじめ20の保守州からの訴えに対して出されたもので、連邦政府機関であるCDC(米疾病対策センター)が、個人のマスク着用を強制する権限はないという判決でした。

 連邦制を取るアメリカでは、こうした生活に密着した規制は州政府に委ねられています。ニューヨークでも公共交通機関以外の屋内外でのマスク着用義務はなくなっていて、マスクを外すことも多くなっています。

 それでも市民を驚かせたのは、この判決を受け各航空会社が直ちに国内線フライトでのマスク着用義務解除を宣言したことです。背景には、パンデミック以来、激増した飛行機内でのトラブルがあります。マスク着用を求める客室乗務員を拒否する客が殴る、口論になるなどの事象が2021年だけで約6000件も起きていました。

 今回の解除でトラブルの減少が期待されているものの、客室乗務員からは不安の声も上がっています。オミクロンBA株による感染がジリジリと上昇しているからで、世論調査でもアメリカ人の過半数はまだ空の旅でのマスク着用は必要と答えています。

 混乱も生じています。フライトではマスクをする必要はなくても、たとえばニューヨーク州内の空港では着用は義務、市内の地下鉄も義務付けが継続されています。しかし、ヒューストンやアトランタなどの都市では義務付けは一切ありません。

 CDCは「マスクを外すのは時期尚早」と改めて強くアピールするとともに、司法省はこの判決を不服として上訴しました。新たな判定が下るまではこれまでの義務付けが延長されることにもなり、一体、今マスクを着けるべきなのか外すべきなのかという混乱はさらに広がりそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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