腰痛のクスリと正しくつきあう

薬物治療だけでなく理学療法や食事も大切

ストレッチは専門職の指導のもとで正しく行う(C)PIXTA

 これまで、腰痛に使われる医薬品について解説してきましたが、薬物治療はあくまでも痛みを抑える対症療法ですので、それ以外の治療や予防も大切です。

 腰痛に対して、薬物治療とともに重要視されているのが「理学療法(リハビリテーション)」です。理学療法は運動療法と物理療法に大別されます。

 運動療法はストレッチなどを行うことで痛みが原因で拘縮した筋肉をほぐし、血流を改善させて筋力の回復を図ります。ただし、過度の運動は痛みを悪化させる場合もあるため、専門職の指導の下で正しく行う必要があります。

 物理療法は、文字通り物理的な刺激を与えることによって痛みを和らげ、機能の回復を目指すことを目的としています。たとえば、急性期の痛みにはアイスパックなどで患部を冷やす寒冷療法を、また慢性期には赤外線治療器やホットパックを用いた温熱療法を行います。牽引療法やマッサージも物理療法の一種です。

 高齢者の腰痛の原因の中には、骨粗しょう症とそれに伴う椎体圧迫骨折があります。骨折に対してはギプスやコルセットなどで固定し、痛みを抑える薬物治療を行っても改善がみられない場合は手術を検討します。手術では最近、金属製のプレートやネジで固定する方法に代わって、「経皮的椎体形成術(BKP)」を選択する方もおられます。背中に小さな穴を開けてセメントを注入する方法で、手術時間も短く痛みは和らぎ、しかも早期離床が可能です。じつは私自身、2年前に高所から転落して胸椎と腰椎を骨折し、経皮的椎体形成術を受けた経験があります。

 骨粗しょう症の予防には、カルシウムやビタミンDを普段の食事から摂取することも重要です。日本人の食事摂取基準では、カルシウムは成人で1日当たり600~800ミリグラム程度を推奨しています。ただし、過剰摂取によって高カルシウム血症などが起こる場合もあるので2500ミリグラムを上限量としています。

 ビタミンDも同様で成人1日当たり8.5マイクログラムの摂取が目安となっています。ビタミンDは脂溶性で体内に蓄積しやすいため、過剰に摂取すると食欲不振、嘔吐(おうと)、腎結石の原因になることもあります。バランスの良い食事を心がけましょう。

 最後に腰痛の薬物治療について簡単にまとめます。腰の痛みを抑えるためには、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」や「AAP(アセトアミノフェン)」、そして「筋弛緩剤」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)」などさまざまな薬が使用されます。そのうえ、内服薬、外用薬、注射薬など選択肢も多いので、副作用なども勘案しつつ適切な治療を行いながら腰痛を抑えていくことが大切です。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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