認知症、不眠、抑うつ状態… 「漢方薬」が効く意外な病気

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員の天野陽介さん(提供写真)
日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員の天野陽介さん(提供写真)

 現在、日本で承認されている漢方薬は294処方、保険適用のものが148処方。その中には、「そういう病気にも効くの?」という意外なものもある。特に知っておきたい認知症、不眠、抑うつ状態に効く漢方薬を挙げよう。

■認知症

 認知症は、東洋医学では五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中でも腎との関わりが深い病気と考えられている。

「腎の働きが低下すると、物忘れをはじめとする加齢に伴う症状が表れます。そのため、腎の働きを補う『八味地黄丸』が認知症対策に役立つと言われています。さらに、頭痛、肩凝り、めまい、不眠などに効く『釣藤散』、全身倦怠感や食欲不振などに効く『補中益気湯』、怒りやすさやイライラに効く『抑肝散』などが、認知症に伴って表れる症状に用いられることもあります」(日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員・天野陽介さん=写真)

■不眠

 不眠の原因はさまざまだが、中でも漢方薬が適しているのは、心理的原因による不眠、そして精神疾患や身体疾患による不眠だ。

「赤ら顔でイライラして落ち着かないなどで入眠に障害があれば『黄連解毒湯』。イライラして怒りっぽいなどの症状があれば『抑肝散』が処方されます。また、抑うつ、驚きやすい、動悸などがあり熟眠できない場合は『柴胡加竜骨牡蛎湯』。更年期障害で熟眠できない、早朝覚醒などがある場合は『加味逍遥散』。中年期以降で、足腰のだるさや夜間頻尿などがあり、早朝覚醒する場合は『八味地黄丸』が適応するとされています」

■抑うつ状態

 抑うつ状態とは東洋医学では、過労や心労により感情の乱れが誘発され、気の滞り(気滞)や気の不足(気虚)が出現したものと考えられる。さらには熱や寒、水滞(水の滞り)や、瘀血(血の滞り)・血虚(血の不足)などでも生じる。

「イライラや怒りっぽさがあり、眼瞼けいれんや手足のふるえなどを伴う場合は『抑肝散』が用いられます。日頃から気分が鬱々としやすい傾向があり、頭痛や食欲不振などを伴う場合は『香蘇散』。『香蘇散』は月経を調節する作用もあり、女性に用いられることも多いです。疲れやすく、頭痛・肩凝り、発作性の上半身の熱感・発汗さらには月経前症候群、更年期障害などがある時は『加味逍遥散』が向いています」

 いずれも漢方薬を用いた治療を行う医療機関か、漢方薬を専門に扱う薬局で処方を受けられる。

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