70歳までに受けておきたい「3つの検査」 血管・脳・睡眠をチェック

頚動脈エコー検査
頚動脈エコー検査(C)PIXTA
①頚動脈エコー検査

 後期高齢者といわれる75歳以上になると、体温や血圧などの調節能力、視力や聴力などの感覚器官の機能、全身の筋力が低下し、さまざまな病気にかかりやすくなる。人生100年時代といわれるいま、健康を維持して人生を全うするためには、深刻な病気にかかる前の段階で自分の健康状態を把握しておく必要がある。遅くとも70歳までには受けておきたい検査を紹介する。

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 心臓病は65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。加齢とともに血管は弾力性を失って硬くなる。そして動脈硬化が進み、血液の通り道が狭くなって血流も悪化する。このようにして血圧が上昇し、狭心症、心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、大動脈瘤といった心臓病や、脳梗塞などの大病が生じる。

 しかし、動脈硬化の程度は、一般的な健康診断や人間ドックでははっきりわからない。自分の血管の状態をきちんと把握して、心臓や脳の病気を予防するために受けておきたいのが頚動脈エコー検査だ。東邦大学名誉教授で平成横浜病院総合健診センター長の東丸貴信氏は言う。

「首を通る頚動脈に超音波を当て、超音波が反射した波の画像から動脈硬化の程度を調べる検査です。頚動脈壁(内膜中膜)の厚さや血液の流れの状態がわかります。動脈硬化によるプラークの状態や血管の詰まり具合、血栓の有無も観察できます。頚動脈の動脈硬化の程度は、全身の動脈硬化の指標になるのです。加えて、心拍動による脈波が足首まで伝わる速さを測定する血圧脈波検査(PWV、CAVI)、足首と上腕の血圧の比を調べるABI(足関節上腕血圧比)検査をセットで受けておくと、さらに正確に全身の動脈硬化がわかります」

 頚動脈エコー検査でプラークが見つかると、生活習慣の改善など早めに対策を講じることができる。50歳以上になったら1度は受けておくのが望ましい。検査は保険適用で、3割負担なら1000~1500円程度で受けられる。

簡易型PSG検査
簡易型PSG検査
②簡易型PSG(睡眠ポリソムノグラフィー)検査

 高齢になると睡眠が浅くなり、夜中に目が覚める中途覚醒や朝早く目覚めてしまう早朝覚醒が増える。それ自体は病気ではないが、ぐっすり眠れない悩みから睡眠障害になったり、質の悪い睡眠が続くと、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病、がん、心血管疾患、認知症、うつといったさまざまな病気のリスクが高くなる。健康長寿のためには、質の良い睡眠が欠かせないのだ。

 自分の睡眠がどんな状態なのかを測定する検査として、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)がある。1泊入院して、頭、顔、首、胸、指、すねなどにセンサーを装着したまま就寝し、睡眠中の脳波、心電図、呼吸運動、動脈血酸素飽和度といった生体活動を計測する。睡眠時無呼吸症候群(SAS)や周期性四肢運動障害などの睡眠障害の有無をはじめ、睡眠の状態も把握できる。ただし、入院が必要なので費用が3割負担で2万~5万円ほどかかるうえ、なかなか時間がとれないという人にはハードルが高くなる。

 そこで、まずは簡易型PSG検査を受けてみる手もある。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏は言う。

「レンタルの装置を使って自宅で行う検査で、就寝時に手首、指、胸にセンサーを装着するだけです。原則として保険適用で、費用は3割負担なら3000円程度です。睡眠中の呼吸や心拍数、酸素飽和度を測定し、AHI(1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数)が40以上あればSASと診断されます。簡易型といっても、一部メーカーの装置は、レム睡眠とノンレム睡眠の割合など睡眠のリズム、どんなタイミングで目が覚めているかといった睡眠の深さ、睡眠中の体の向きも調べることができます」

 検査で自分の睡眠のどこに問題があるのかがわかれば、必要ならばCPAPや薬物による治療で改善が見込めるし、そうでなくても質の高い睡眠のための食事や運動といった生活習慣を見直す対策ができる。

アルツハイマー病の早期発見にはアミロイドPET検査が有効
アルツハイマー病の早期発見にはアミロイドPET検査が有効
③アミロイドPET検査

 厚労省のデータによると、日本における65歳以上の認知症の患者数は約600万人(2020年)と推計され、25年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている。

 そうした認知症の7割を占めているのがアルツハイマー病で、現時点では根治薬がない。だからこそ、できる限り早期発見して対策を講じ、発症させない、あるいは進行させないことが重要になる。

 そのための大きな武器になるのがアミロイドPET検査だ。

「アルツハイマー病の原因になるアミロイドβと呼ばれるタンパク質が、脳の中にどれくらい蓄積しているかを調べることができます」(アルツクリニック東京院長の新井平伊氏)

 アミロイドβは、アルツハイマー病が発症する20~25年ほど前から蓄積し始める。さらにタウと呼ばれるタンパク質の蓄積も進んでいき、やがて神経細胞が壊れて脳が萎縮し、認知機能の低下が表れる。

「アルツハイマー病は脳ドックで使われるMRIで脳萎縮が見つかる段階からの対策では不十分で、脳萎縮が出てくる前に対策を講じたい。そのためにはいかに早くアミロイドβの蓄積を発見するかが重要なのです」

 アミロイドPET検査では、アミロイドβに集まる性質がある薬剤を注射し、時間を置いてPETで脳を撮影する。すると、アミロイドβがたまっている部分が映し出される。

 アミロイドβの蓄積が見られれば、認知症の発症に関係しているとのエビデンスがあるリスク因子を除外し、脳の健康を保つための運動や食事といった改善策を打てる。

 現時点では保険適用外なため検査の費用は約30万~60万円前後と高額だが、毎年MRI検査を受けている人にはより有意義な将来への投資と考えてもいいだろう。

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