「ゆるジャンプで、体重が10キロ減り、腹囲が5センチ細くなりました」
こう話すのは、抗加齢医学研究の第一人者として知られる、愛媛大学医学部付属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也医師(57)。2006年に国立大学では先駆けとなるアンチエイジングを研究する抗加齢センターを開設し、多くの患者に血管障害や認知症の予防などの指導を続けてきた。
そんな伊賀瀬医師がゆるジャンプを始めたのは2018年。鉄棒や縄跳びを家族に見せようとしたところ、まったくできず愕然。そこで鉄棒と縄跳びのトレーニングをしようと考えたが、「ぶら下がれる場所」や縄がないとできない。いつでもどこでもできるものは……ということで、考えついたのが、ゆるジャンプだった。
「最初は10回程度でふらついていましたが、1カ月ほどで1分間で100回は跳べるようになり、朝昼夕、各1分間100回ずつジャンプをするようにしたのです」
同時期、テレビで見た歌手のGACKTさんのインタビューにも影響を受けた。彼がソロ歌手としてデビューするとき、食べ物の中で一番好きだった米を断つことにしたと話しているのを聞き、「アンチエイジングの研究に関わっている私も、多少は炭水化物を我慢すべきかな」と思ったという。
「パスタやご飯が大好きで、飲みに行ったときは締めにパスタやラーメンがマストだったのですが、ちょっと控えるようにしました。炭水化物をゼロにすると頭の働きが悪くなるので、朝はしっかり、昼はちょっと少なめ、夜はもうちょっと少なめにし、締めのラーメンは回数を減らしました」
すると2カ月で2キロ痩せ、周囲から「痩せた?」と言われるようになった。それでモチベーションが上がり、今まで車で移動していたところを歩くなど、1日の歩数を増やしていった。結果、月1キロずつ体重が落ち、82キロ、腹囲86センチから、1年後には72キロ、腹囲81センチに。
ゆるジャンプのやり方は次の通り。
①手首足首をゆっくり回し、膝の屈伸をするなど、準備体操をする
②かかとが床から少し離れる程度に軽くジャンプする(写真A)
ネーミングの通り、「ゆる」でOK。高く跳ぶ必要はなく、回数、時間もできる範囲で。
「ポイントは1つだけ。同じ位置に着地するよう、まっすぐジャンプする。私はバスマットを敷いてやっています」
「ゆるジャンプ」軽く飛ぶだけで10キロ痩せてウエスト5センチ減
体の約半分の筋肉は下半身に集中しており、減量には下半身の筋肉を使うことが最も効果的。ゆるジャンプでは太ももの前面の大腿四頭筋、太ももの裏側のハムストリングスが鍛えられるので、効率よく痩せられる。
「下半身の筋肉の強化は動脈硬化の進行を抑制し、骨を鍛え、体のバランス能力を向上させて健康寿命を延ばすことが私たちの研究で明らかになっています。ふくらはぎの筋肉も強化するので、血液を心臓に戻すポンプ機能を高め、血液循環を良くして高血圧の予防・改善、高血糖の改善にも役立ちます。ジャンプは全身の筋肉を使うので代謝が上がりますし、酸素を取り込みながら行う有酸素運動でもあり、筋トレと有酸素運動の2つの効果を狙えます」
何歳から始めてもOK。ただし、足首や膝などに痛みが出たらやめる。持病がある人は、行う前に主治医へ相談を。
■バージョンアップ①
手を上げてジャンプすると効果が増す。
「バンザイをして」「左右の手指を組み、手のひらを上に向けて『伸び』をするような姿勢で」「手指をクロスさせて(写真B)」のいずれかで。
■バージョンアップ②
ウエストを絞りたい場合は、ジャンプをするときに腰から上半身をひねる(写真C)。
■バージョンアップ③
かかとの上げ下げを。椅子の背を持ったり、壁に手を当てたりして転ばないようにしながら、ゆっくりとかかとを上げてつま先立ちをし、かかとに体重をかけてゆっくりと下ろす(写真D)。1分間30回が理想だが、最初は回数、時間にこだわらなくていい。