Dr.中川 がんサバイバーの知恵

オランダ代表監督が告白 前立腺がんは放射線&ホルモン療法で仕事と治療の両立を

ファン・ハール監督は夜中にキャンプを抜け出して(C)ロイター

 前立腺がんは、細胞の悪性度から低リスク・中リスク・高リスクに分類されます。ファン・ハール監督は、「細胞が攻撃的な形」とされ、高リスクでしょうか。中リスクと高リスクは、放射線治療にホルモン療法を加えることで、治療成績が向上するのです。監督も、ホルモン療法をプラスしていると思います。

 ホルモン療法は、放射線治療の前に半年ほど行うのが一般的。薬は、1日1回1錠の飲み薬と、1カ月もしくは3カ月に1回の注射薬です。数カ月に1回、注射で通院したときに、錠剤をまとめて処方してもらえば、服薬の負担は少ないでしょう。生活習慣病で通院するのとあまり変わりません。

 では、放射線はどうかというと、従来の放射線は、月曜から金曜まで週5日で合計38回の照射が必要でした。それがよりピンポイントに照射できる定位放射線の登場で、監督が受けた25回照射が行われるようになり、より高精度なタイプなら、5回程度で済むようになっています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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