医者も知らない医学の新常識

塩分不足による低ナトリウム血症リスク 15度を超えたら要注意

スポーツドリンクだけでは低ナトリウム血症の予防は難しい(C)日刊ゲンダイ

 気温の変動が大きい今の季節は、体がその変化に順応することが難しく、熱中症に注意が必要と指摘されています。そうなると熱中症の予防のためにスポーツドリンクなどで水分をたくさん取ることが推奨されます。

 しかし、そこで注意が必要なのが塩分の不足です。以前、ボストンマラソンで多くの体調不良者が出たことがあり、その原因を調査したところ、多かったのは血液の塩分濃度が低くなる低ナトリウム血症でした。

 暑い季節には汗から塩分を喪失する量が増えます。スポーツドリンクを飲んでいれば、塩分が足りると思いがちですが、実際には血液の塩分濃度はもっとずっと高いので、それだけでは低ナトリウム血症を予防することは難しいのです。

 今年の内分泌学の専門誌に、気温と低ナトリウム血症との関連を検証したスウェーデンの論文が掲載されています。

 それによると平均気温が15度を超えると低ナトリウム血症による入院が増加し、高齢者では特にその危険性が高まります。80歳以上での低ナトリウム血症のリスクは、真夏日では気温の低い日の15倍にもなっていたのです。

 高齢者ではより体から塩分が失われやすく、高血圧などの薬の使用も、そのリスクを増加させるのです。暑い季節には、熱中症とともに、塩分の喪失による低ナトリウム血症にも注意が必要であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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