コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

「超小型陽子線治療装置」開発のカギは回転しないガントリー

(ビードットメディカルHP)

 古川社長は、もともとは放医研の研究員。医療機器メーカーなどに治療装置のコンサルティングを行う中で、陽子線治療装置を小型化できると確信したという。

 これまで陽子線の分野では装置の小型化競争が繰り広げられてきたが、ほとんどが従来の装置をそのまま小型化するケースが多かった。装置は筒状の大きな機器を360度回転させて、さまざまな方向から陽子線を照射する「回転ガントリー」という技術を採用している。そのために装置が大型になってしまうのだ。

「超小型装置は、巨大なガントリーを回転させずにビームの角度を変える画期的な技術を使用しています。ガントリーを360度回転させる代わりに、電磁石を使って陽子線を曲げることで多方向からの集中照射が可能なのです。また、治療台が水平に180度、ガントリーが上下方向・円弧上に140度動くことで、複雑な構造を持つ病巣に対して周囲正常組織へのダメージを抑えつつ集中的な照射を可能にしています」

 超小型装置は、今年中には薬事承認される見込み。導入コストは従来の50億円ほどから、約20億円に抑えられるので、一般病院への普及が見込まれる。陽子線治療の適応疾患は今年拡大され、肝細胞がん、局所進行膵(すい)がんなど、8種類のがんが保険適用になっている。

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