役に立つオモシロ医学論文

高麗人参の滋養強壮効果で寿命が延びるのか? 5万人超を解析

高麗人参
高麗人参

 2000年以上の歴史を誇る中国の伝統的な健康食材に「高麗人参(朝鮮人参)」があります。疲労回復や食欲不振など、滋養強壮目的で用いられることの多い高麗人参は、日本でも医薬品や健康食品として販売されています。

 高麗人参に含まれているギンセノシドと呼ばれる成分には、抗炎症作用や抗酸化作用などが知られています。しかしながら、高麗人参の有効性を検討した研究データは限られており、その効果の詳細はよく分かっていませんでした。そんな中、高麗人参の摂取と健康状態への影響を検討した研究論文が、日本疫学会誌に2022年4月9日付で掲載されました。

 この研究では中国に在住している女性5万6183人が対象となりました。被験者に対してアンケート調査を行い、高麗人参の摂取量やその頻度が調査され、死亡リスクとの関連性が解析されています。なお、研究結果に影響を及ぼし得る年齢や収入、運動習慣などの因子について統計的に補正して解析しています。

 平均で14.7年にわたる調査の結果、高麗人参を摂取していない人と比較して、定期的に摂取している人で死亡リスクが8%、統計的にも有意に低下しました。また、高麗人参の摂取期間と死亡リスクの関連性を解析したところ、摂取していない人と比べて、摂取期間が3~6年未満の人で10%、6年以上の人で15%、統計的にも有意に低下しました。

 高麗人参を積極的に摂取している人では、そうでない人に比べて健康に対する関心が高く、もともと死亡リスクの低い人だった可能性もあります。論文著者らは「この結果は、高麗人参の摂取により死亡率が低下するという健康上のメリットを示唆するものであり、さらなる研究の実施を正当化する」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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