上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓にトラブルがある人はマスクによる低酸素に注意する

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 またマスク装着時は、マスクの内側の温度が上昇します。それに伴って自身の体温も上がるため、体は放熱しようとして毛細血管を広げます。すると毛細血管内で血液が停滞しやすくなって全身の血液量が減ってしまいます。心臓は少ない血液を全身に行き渡らせようとするので、負担がかかってしまうのです。健康な人であれば大きな問題にはなりませんが、心臓の機能が低下している人にとってはリスクになるといえるでしょう。

 心臓や肺にトラブルを抱えている人は、マスク装着時の労作で低酸素が起こった場合に備え、対策を講じておくのも一案です。いちばん手っ取り早いのはスポーツ用品店などで手軽に購入できる登山用の「携帯酸素ボンベ」を持ち歩く方法です。低酸素状態になって激しい息切れが起こった際は、酸素を30秒ほど嗅げば症状が改善し、大きなトラブルを予防できます。

 さらに、血液中の酸素が不足していないかどうかを確認できる小型の健康機器「パルスオキシメーター」を利用すると、さらに安心です。クリップのように指にはめるだけで動脈血酸素飽和度を測定できます。健常者の正常値は安静時で96~99%とされ、90%を切ると呼吸不全と判断されます。こちらも、ドラッグストアや家電量販店などで手軽に購入できます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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