名医が答える病気と体の悩み

どんな人が「痔」を繰り返すのか…手術のタイミングは?

写真はイメージ
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 日本人の3人に1人は「痔主(痔持ち)」といわれます。種類は、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つあり、繰り返す方は、いぼ痔と切れ痔のケースがほとんどです。

 いぼ痔は排便習慣が原因でなります。便秘がちで排便時に強くいきむことが多かったり、常に下痢気味な方は、肛門に負担がかかります。肛門の内側の内肛門括約筋と肛門の粘膜の間にある組織を刺激し、血行障害が起こり、肛門管の静脈にこぶができます。

 切れ痔もまた便秘や下痢を繰り返すなどの排便習慣によって、肛門の出口付近の皮膚を傷つけてしまうことが原因で起こります。とくにウォシュレットで肛門の中まで過剰に洗浄したり、カサカサになるまで拭きすぎるタイプの方に多いです。

 いずれも基本的には安静にしていれば、自然に治癒します。いぼ痔の場合、肛門からこぶが飛び出ておらず血が出るケースでは鎮痛・消炎成分が入った軟膏薬を塗ります。その他、排便時に脱出するが自然に戻ったり、指で押して戻る程度の場合、切らずに「ジオン注射」を利用する方が増えています。患部に直接薬を注入し、治療中や治療後の痛みがほとんどなく日帰りで終わります。3割負担で1万~2万円程度が相場です。

 ただし、再発の可能性もありますし、指で押しても簡単に戻らなかったり、脱出したままなら「結さつ切除術」によっていぼ痔を根元から切り取って、縫い合わせます。3割負担で相場は2万~3万円ですが、別途麻酔費や入院の場合は入院費用も伴います。

 一方、切れ痔の場合は、傷を治す保存療法が基本になります。ただし、慢性化すると切れた部分がしこりのように硬くなって、肛門狭窄になります。排便が困難になったり、痛みがひどかったりすると肛門の狭くなった部分を拡げる「用手肛門拡張術」、切開する「内括約筋側方皮下切開術」が必要になります。局所麻酔で日帰り手術が可能です。3割負担で2万~3万円が相場です。

 最後に「痔」を繰り返す方には生活習慣の見直しも伝えています。排便時間は「5分以内」を心がけてください。肛門は便座に座るだけで負担がかかります。排便しながら雑誌、新聞、スマホを見ている方は、それをやめるだけで負担が軽減します。

 また、排便は必ず毎朝する必要はありません。痔を繰り返す患者さんに聞くと、「便意を催さないのに毎朝、習慣でいきんでいる」と答える方が多い。これも肛門に大きな負担をかけています。

▽白畑敦(しらはた・あつし)2002年に昭和大学医学部卒業後、07年に昭和大学藤が丘病院消化器外科助教、その後、関東労災病院外科、横浜旭中央総合病院外科、昭和大学藤が丘病院兼任講師などを経て、現在はしらはた胃腸肛門クリニック横浜院長を務める。

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