がんと向き合い生きていく

妻には言えても医師には言えない…がん患者の心中

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 73歳のKさん(男性・定年退職後)は胃がんの手術をしてから2年が経ちました。すでに再発予防のための抗がん剤治療は終わっていて、その後の経過を診てもらうために手術した病院へ3カ月ごとに通院しています。

 2カ月ほど前から、時々背部のあたりに痛みを感じる時があります。Kさんは痛みが出ると、すぐに「再発、転移ではないか」と心配してしまいます。そんな時、奥さんに「背中が痛い」「背中の奥が鈍く痛い」と訴えます。すると奥さんは「病院に行ったら? 次の診察はいつだった?」と心配そうにしてくれたり、「貼り薬でも貼ったらどう?」「今度はCT検査もあったよね」などと声をかけてくれます。

 そして今日、ようやく診察の日になりました。朝、いつもより早く6時に起きて準備をします。背中の痛みは昨夜からありません。

 歩いて15分の最寄り駅は、相変わらずの人、人、人です。久しぶりに電車に乗りましたが、コロナが心配で、つり革にも掴まりたくないので立っていましたが、まわりの人との距離は十分に取れませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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