がんと向き合い生きていく

妻には言えても医師には言えない…がん患者の心中

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 1時間半が過ぎて、Kさんはやっと呼び出され、診察室に入りました。

「ずいぶん待たせてしまってすみません」

「いえいえ、そんなことはありません」

「採血の結果は特に変わっていませんよ。CT検査も以前と変わらないと思います。このように画像を比べても同じです」

「はい。ありがとうございます」

「変わりはありませんか?」

「はい。大丈夫だと思います」

 Kさんはホッとして、いつもの薬を処方してもらって診察を終えました。

■「遠慮」の程度が違う

 自宅に帰ってくると奥さんが「大丈夫だった?」と聞いてきました。

「うん、採血もCTも大丈夫だって。良かった。安心した」

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事