去る4月、「狂犬病」が話題になりました。ウクライナから日本に来た避難者が帯同したペットの犬に対し、農林水産省が狂犬病対策をすることを条件に検疫施設での待機期間を大幅に短縮したのです。
通常であれば、海外から日本に犬を連れてくる場合は、狂犬病にかかっていないかを確認する「動物検疫」を受ける必要があります。動物検疫は、最長180日間検疫施設で隔離し、飼い主はエサ代や飼育を委託する費用を負担しなければなりません。ただし、事前に現地で待機期間を済ませ、感染していないことを示す書類があれば、隔離は必要ありません。
今回、ウクライナから避難してきた人の中には、緊急事態の中で証明書の準備などができなかった人もいました。そこで農林水産省は、飼い主への聞き取りや持参した資料からワクチン接種を2回済ませていることが確認でき、かつ入国後の検査で抗体が十分にあるとわかれば、施設での隔離を免除して滞在先に連れて行くことを認める通知を出したのです。
狂犬病は世界のほとんどの国や地域で発生している感染症で、毎年約5万5000人が亡くなっています。ウクライナでも野生動物に狂犬病が発生しています。インドネシアでは、島に持ち込まれた犬から感染が広がり、160人以上が死亡したという事例もあります。
狂犬病が発生していない「清浄国・地域」は、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム、そして日本だけで、いずれも島国です。大陸では野生動物が隣国からも入ってきてしまうため、なかなか防ぐことが難しいのでしょう。
狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症です。発症すると、神経が過敏になって水などを恐れるようになる特徴的な症状があるため、「恐水病」といわれることもあります。落ち着きがなくなって暴れるケースもあり、けいれんなども起こります。まだ有効な治療法はなく、ほぼ100%の患者さんが亡くなります。
感染前であれば、ワクチン接種によって予防が可能とされています。そのため日本では狂犬病予防法によって、飼い犬の市町村への登録および毎年1回の狂犬病ワクチンの予防接種が義務づけられているのです。
狂犬病発生国へ渡航する際は、渡航前の狂犬病ワクチン接種が必要です。また、現地の犬や猫などの動物には接触しないことが大切で、近づいたり手を出すのはやめましょう。
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