前回、人工妊娠中絶の非合法化を示唆するアメリカ最高裁の内部文書がリークされ、大炎上しているとお伝えしました。
ちなみに人工妊娠中絶は、日本では1996年の母体保護法によって妊娠22週まで認められています。アメリカの連邦法では24週までが目安とされ、どうしても産めない・産みたくないという時に中絶を選択するのは女性の権利であると考えている人が人口の6割を占めています。
中絶手術を受けているのは10代の若者というイメージがあるかもしれませんが、アメリカでは多くが20代のシングルマザーです。貧困でマイノリティー、満足に医療も受けられず避妊の手段も得にくい彼らが、すでにいる子供たちを少しでも幸せに育てるために中絶を選ぶのです。アメリカで中絶は女性の権利問題であるのみならず、医療、貧困、そして人種問題にも関わっています。
それに対し、「胎児にも命が宿っているのだから中絶は殺人」と考えているのが敬虔なキリスト教徒で、トランプ支持に代表される極右の保守層も同様に反対しています。
では、保守に大きく傾いた最高裁が、連邦として49年ぶりに中絶を非合法とする裁定をした場合、何が起こるのでしょうか。そうなると各州の判断となるので、南部テキサスなどの保守州で一気に中絶が禁止される一方、ニューヨークなどリベラル州では現行通りということになります。
必要な人はリベラル州まで出向けばいいのですが、貧困層には無理でしょうし、産んで養子に出せばいいという考え方もありますが、女性が受けるトラウマは計り知れません。また、これまで合法化された同性婚や、場合によっては避妊の権利までもが覆される危機感を持つ人も増加しています。
最後に、11月の中間選挙にどう影響するのか?
勢いづいた保守共和党が多数派を奪還するのか、それともリベラル民主党が反撃するのか。女性の健康や人生に関わる一大事が政治利用される異常事態はまだまだ続きそうです。
ニューヨークからお届けします。