今世紀に入ってから、より強力なアドヘシンを有する、つまりより強く腸内に定着してくれる乳酸菌やビフィズス菌を探索する試みが、大学や食品メーカー、製薬会社などで精力的に行われています。そうした研究の過程で、組織血液型抗原を認識する乳酸菌が見つかってきました。
とくに乳酸菌が持つ「GAPDH」と呼ばれるタンパク質に、注目が集まっています。このタンパク質は、ガラクトース(牛乳に含まれる糖の一種)などの分解に関係する酵素のひとつなのですが、それだけでなく粘膜の組織血液型抗原、とくにA抗原とB抗原を認識し、しっかりと結合する機能も持っていることが分かってきました。
この酵素の遺伝子を人工的に作って、GAPDHを持たない乳酸菌やビフィズス菌に組み込めば、さまざまな特性を持った菌を、効率よく腸内に定着させることができるかもしれません。またGAPDHを改良して、「A抗原だけ」あるいは「B抗原だけ」に結合するようにできるかもしれません。
A抗原は血液型A型の分泌型、B抗原は血液型B型の分泌型の人に発現しています。将来的には、それぞれの型に合ったヨーグルトやサプリメントを開発できるようになるかもしれない──そんな未来が少しずつ現実に近づいています。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。