60歳からの健康術

眼科編(11)眼球周囲結合組織のたるみから起きる目の病気

写真はイメージ
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 年をとると全身にたるみが出てくる。それは目も同じだ。顔や体のたるみは見た目が悪くなるだけだが、眼筋のたるみは見え方も変えてしまうから要注意。たとえば眼瞼下垂だ。まぶたが下がってきて見えにくくなる病気で、いつも眠たそうに見えたり、何とかまぶたを上げて見ようとするために頭痛や肩こりの原因になったりする。上まぶたを上げる筋肉の力が弱くなったり、その付着部の腱が滑って緩むことで起こる。

 同じく目の周りのたるみや緩みで生じるのが「サギングアイ症候群」「たるみ目症候群」だ。自由が丘清澤眼科(東京・目黒区)の清澤源弘院長が言う。

「最近話題になっている目の病気で、高齢者に見られる後天的な内斜視の原因のひとつです。眼球の周りには眼筋を包む結合組織の輪があり、それが眼球を取り巻く筋肉を固定しています。その働きにより左右の目を適切な方向に向けられるのです。しかし、加齢でコラーゲンが減少するとその結合組織にたるみが生じて左右の眼球の向きが揃わなくなります。いわゆる内斜視の状態です。結果として、ものがぼやけて見えたり、二重に見えたりするのです」

 実際、遠方で物が二重に見えると訴える79歳の女性の目をMRI検査で調べたところ、目の筋肉を支える結合組織に緩みが見られたという。

 年寄りの病気ならば、もっと昔から知られていてもよさそうだが、なぜいま話題なのか。

「それは目を酷使する人が増えて症状を訴える老人が増え、また病態理解も進んだからです。人間は目から9割以上の情報を得ており、スマホやパソコンなどのデジタル機器はもちろん、大量の紙の資料を見ることなしに生活はできません。現代人はそれだけ目を酷使しているわけで、眼球を支える筋肉や結合組織はそれだけダメージを受けているということです」

 加齢で目が悪くなるという意味は、白内障のようにカメラのレンズにあたる水晶体のタンパク質が変性し劣化するだけではない。眼球を適切な位置に支えられなくなり、斜視になることもあるということだ。覚えておこう。

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