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視力低下の原因は学歴社会にある? 中国の研究チームが報告

写真はイメージ
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 中国では、遠くのものが見えにくくなる近視の人の割合が世界的にも高く、7~18歳の半数以上が視力の障害を患っているといわれています。近視の原因はさまざまですが、屋外での活動時間が短い、読書やスマートフォンの操作など近くのものを見続ける作業が多い、遺伝的な要因、年齢などとの関連性が知られています。

 学校教育もまた、近視のリスクを高める原因ではないかという指摘もありました。しかし、近視のリスク増加が年齢による影響なのか、学校教育の環境によるものなのか、詳しいことはよく分かっていませんでした。そんな中、学校教育と近視の関連性を検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナルに2022年4月1日付で掲載されました。

 この研究では、中国の小学校、中学校、高校に通う6~18歳の延べ406万4897人(国勢調査5回分)が解析対象となっています。学校に通う年数と裸眼視力の低下について、年齢による影響を補正して解析されました。なお、視力は中国で一般的な対数表記で評価されています。日本で一般的な小数表記「1.0」~「0.1」の視力は、対数表記で「5.0」~「4.0」ポイントに相当します。

 解析の結果、学校に通う年数が増えるごとに、視力は年間0.03ポイント、統計的にも有意に低下することが分かりました。また、学校教育に関連する視力の低下は、あらゆる原因による視力低下の78.9%を占めると見積もられています。

 長く教育を受けることが視力の低下と関連するという結果に対して、論文著者らは「受験、教育に対する関心の高まり、パソコンやタブレット端末などのデジタルスクリーンの頻繁な使用が視力低下に影響しているのではないか」と考察しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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