科学が証明!ストレス解消法

眉間にしわを寄せて考える「古畑任三郎」スタイルが脳を活性化

脳の活性化につながる
脳の活性化につながる(C)fizkes/iStock

 考え事をするとき、眉間にしわを寄せる──。「古畑任三郎」を演じた故・田村正和さんをはじめ、刑事ドラマに登場する刑事や探偵は、推理する場面で、何かと眉間にしわを寄せるポーズを取ります。ときには指で眉間を押さえることも。

 現実世界でも、眉間にしわを寄せて考え事をする人がいます。そういった人を目撃すると、「なに古畑任三郎だよ」などとツッコみたくなってしまうかもしれません。あくまでそれはドラマの世界でしょ──と。

 しかし、眉間にしわを寄せて考えるというアクションは、れっきとした真面目な考え方です。名門私立大学として名高いノースウエスタン大学のフアンらの研究によれば、「眉間にしわを寄せて考え事をすると創造性がアップする」という結果(2020年)が明らかになっています。ウソのようなホントの話が、科学では明らかになってしまうから興味が尽きません。

 実験では被験者たちに、「眉間にしわを寄せながら楽しい出来事を思い出す」「笑いながら悲しい出来事を思い出す」「笑いながら悲しい音楽を聴く」「眉間にしわを寄せながら楽しい音楽を聴く」など、表情とマインドが異なるさまざまなバリエーションを試しました。

 その結果、表情とマインドが一致しているときよりも、一致していないときのほうが脳の活性度が上昇したそうです。つまり、苦々しい体験をしているわけではない人が、あえてマインドと逆の表情である眉間にしわを寄せてしかめっ面をすると、脳が活性化すると示されたのです。当事者ではない第三者である刑事が、解決の糸口を探そうと難しい顔をして悩むのは、脳の活性化につながっているわけで、この実験結果においては理にかなっているのです。

 心と体が逆の動きになることで、脳は「なんで相反するアクションをするんだろう?」と活性化し、物事を多様な視点から考えられるようになるといいます。たとえば、あなたがスマホをどこに置いたか失念したとき、焦って、苦々しい気持ちで考えるよりも、ニコニコして思い出したほうが脳は活性化するとも言えるでしょう。

 以前、「ヘンテコな動きをすると楽しい気持ちになる」という研究を紹介した際、「変な動きをするほど楽しいのだから、私は楽しいのだ」と脳が勘違いし、気持ちが楽しくなると説明しました。同様に、フアンらの研究も、人間の脳の面白さを伝える興味深い研究と言えます。

 不思議なもので名探偵と呼ばれる人物は、眉間にしわを寄せるだけではなく、「金田一耕助」のように頭をかきむしっていたり、特徴的な人物が少なくありません。そういった特徴的なアクションは、あくまでキャラクター付けによるところが大きいと思う半面、先の「心理状態と真逆の顔をすれば脳が活性化する」という実験結果に鑑みれば、実は納得の演出だったりします。

 もしみなさんが、困っている人を助けるような場面に遭遇したら、古畑任三郎のように「う~ん」と言いながら眉間にしわを寄せると、名案が浮かびやすくなるかもしれませんよ。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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