「GI(グリセミック・インデックス」は、食後血糖値の上昇度を示す指標のこと。1981年、トロント大学のジェンキンス博士らが、「糖質量が同じでも、血糖値を上昇させる速度や程度に差がある」として、GIに関する論文を最初に発表しました。食品ごとにGI値が設けられています。
食事をすると、食べ物の中に含まれている糖分が血液中にブドウ糖として取り込まれ、血糖値が上がります。ブドウ糖が増えることで膵臓からインスリンが分泌され、それによってブドウ糖が肝臓や筋肉、脂肪組織など全身の細胞に取り込まれ、血糖値が下がります。
ところが、インスリンの分泌が少ない、分泌のタイミングが遅い、インスリンの作用が低下するなどが起こると、血糖の処理が十分に行われず、血糖値が下がりにくくなります。食後数時間経っても血糖値が下がらない状態が慢性的に続くのが糖尿病となります。
血糖値が下がりにくい人は、食後の血糖値の上昇が緩やかな食品を選んだ方がいいとも言われ、その選択に役立つのがGI値になります。GI値が高いほど食後の血糖値の上昇が急激であり、逆にGI値が低いほど食後の血糖値の上昇が緩やかになります。
カロリーが高い食べ物ほどGI値が高いと考えている人もいますが、GI値は食品に含まれる糖質の吸収度合いなので、GI値とカロリーはイコールではありません。
また、同じ炭水化物であっても、高GI値のものもあれば、低GI値のものもあります。たとえば、白米は玄米よりもGI値が高い。一般的に、GI値が70以上を高GI値、56~69を中GI値、55以下を低GI値として分類されています。
■心筋梗塞や脳卒中の発症リスクに関係ありとの報告も
カナダのトロント大学などが20カ国、13万7851人を対象としたGI値に関する調査結果(中央値9.5年間の追跡調査)を発表しています。
それによると、GI値が最も高い食事をしていたグループでは、最も低い食事をしていたグループと比べ、心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死のリスクが、ベースライン時に心血管疾患既往がないと21%、心血管疾患既往があると51%、それぞれ高くなったとのこと。
低GI値の食事をしていると2型糖尿病の発症が低減するということを示した研究も報告されています。一方で、食事とGI値についての研究は十分にされているとはいえず、GI値を順守した食事療法をしたら糖尿病の合併症が減ったという大規模な研究データは出ていません。
また、加工食品に含まれる「フルクトース」(果糖)はGI値は低いですが、過剰に取ると2型糖尿病のリスクを高めます。
2型糖尿病の患者さんにGI値について聞かれた時、私が答えているのは「GI値が高い食品を普段から食べ過ぎていて血糖値が上がったのなら、食事の選択肢にGI値を取り入れてもいいかもしれません。しかし、2型糖尿病では生活の不規則さに起因する肥満が関係していることが珍しくない。肥満なら、そちらから介入すべき」というもの。GI値に関して否定はしませんが、積極的肯定もしない立場です。
日本人の昔の食事は米中心で、GI値が高めでした。しかし当時は、糖尿病が多かったわけではない。それから考えると、GI値の高い食品だけが糖尿病のリスクを上げているのではない。
「GI値とカロリーはイコールではない」と前述しましたが、たとえばトンカツやハンバーグ、ステーキなどは、カレーライスやオムライスといったご飯をメインにしたメニューよりGI値が低めではあるものの、「だから安心」と肥満の人が食べ過ぎれば、肥満は解消されず、糖尿病対策にはまったくならないでしょう。
ただし、日頃からGI値を気にしている意識の高い人は、食事バランスなどに気を使っており、結果、糖尿病になりにくい傾向があるのも事実なのです。