進化する糖尿病治療法

「低GI値」を意識した食生活で血糖値を下げられるのか

GI値が高い食品だけが糖尿病のリスクを上げているのではない

 それによると、GI値が最も高い食事をしていたグループでは、最も低い食事をしていたグループと比べ、心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死のリスクが、ベースライン時に心血管疾患既往がないと21%、心血管疾患既往があると51%、それぞれ高くなったとのこと。

 低GI値の食事をしていると2型糖尿病の発症が低減するということを示した研究も報告されています。一方で、食事とGI値についての研究は十分にされているとはいえず、GI値を順守した食事療法をしたら糖尿病の合併症が減ったという大規模な研究データは出ていません。

 また、加工食品に含まれる「フルクトース」(果糖)はGI値は低いですが、過剰に取ると2型糖尿病のリスクを高めます。

 2型糖尿病の患者さんにGI値について聞かれた時、私が答えているのは「GI値が高い食品を普段から食べ過ぎていて血糖値が上がったのなら、食事の選択肢にGI値を取り入れてもいいかもしれません。しかし、2型糖尿病では生活の不規則さに起因する肥満が関係していることが珍しくない。肥満なら、そちらから介入すべき」というもの。GI値に関して否定はしませんが、積極的肯定もしない立場です。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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