名医が答える病気と体の悩み

重病が隠れた「立ちくらみ」…病院に行くべきサインは?

耳鼻科専門医の内尾紀彦氏
耳鼻科専門医の内尾紀彦氏(提供写真)

「立ちくらみ」とは医学用語で、気を失う一歩前の「前失神」または「失神」と呼ばれます。症状は、立ち上がったときにふらついたり、目の前が真っ暗になったり、クラクラッと目が回って倒れそうになったりします。立ちくらみがサインになる重病としては、「脳梗塞」「脳出血」「脳腫瘍」をはじめとした脳の病気によって、脳幹や小脳が酸欠状態になるためにふらつきなどが起こるのです。また、「心臓病」「起立性低血圧」といった循環器系の病気で立ちくらみが生じることがあります。

 しかし、立ちくらみは「めまい」と混同され、軽く見られがちです。症状が治まったら病院に行くのをやめてしまい、手遅れにしてしまうケースも少なくありません。医師でも「めまい」と「たちくらみ」の区別がつかない事もあります。「めまい」 は95%耳からくるといわれておりますが、目の前がぐるぐる回る症状だけではな く、ふわふわする、眼前暗黒感、物が二重に見えるといった症状を伴う事があり ます。「症状が軽い」と自己判断をせずに、早期に耳鼻咽喉科の受診をお薦めし ます。

 重病が隠れている場合は、立ちくらみ以外になんらかの症状が伴います。たとえば脳梗塞や脳出血なら、手足のしびれ、しゃべりにくさ、意識障害、吐き気や嘔吐、頭痛などが起こります。とくに高齢者は注意が必要です。

 立ちくらみに耳鳴りが伴う場合も、脳の病気である可能性があります。動脈硬化の進行や高血圧によって脳の血管が徐々に硬くなっていくと、血栓や塞栓ができやすくなり、血液の量が減って脳が虚血状態となり立ちくらみが起こります。耳の神経の奥に脳腫瘍ができていたケースもあります。

 また、眼前暗黒感がある場合は、循環器系の病気を疑います。眼前暗黒感は脳が虚血状態になることが原因で生じます。血圧低下や不整脈といった循環器系に異常があると心臓の働きが悪くなり、血液の量が減って、脳に十分な血液を送ることができなくなるのです。

 最悪の場合、命に関わるケースもありますから、立ちくらみを軽く考えないようにしましょう。

▽内尾紀彦(うちお・のりひこ) 東京慈恵会医科大学卒。同大耳鼻咽喉科学教室入局後、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科レジデント、東京慈恵会医科大学付属病院耳鼻咽喉科助教などを経て、現在は「そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院」院長を務める。

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